今週の特集

進化する馬運車 ロブチェンなど担当の中野運送店 レースで本領発揮へマイナス要素減らす工夫の数々

2026年7月8日 05:20

中野運送店で25年以上、競走馬の輸送に携わっている河島幸一運転士(撮影・坂田 高浩)

 夏競馬の水曜企画は「夏色思い」。記者が夏に関するテーマを考え、深掘りする。第4回は大阪本社の坂田高浩(41)が担当。競馬開催に欠かせない馬運車にスポットを当て、今年の牡馬クラシック2冠を制したロブチェンやオークス馬ジュウリョクピエロを輸送した中野運送店を取材。河島幸一運転士(53)に競走馬のストレスを軽減して運ぶための工夫、輸送における暑熱対策などを聞いた。

 競馬開催における潤滑油として、馬運車は東西トレセンから各競馬場へ競走馬を円滑に輸送している。栗東から最も時間を要する札幌まではフェリーに積み込む作業も挟むため約27時間かかるという。中野運送店で25年以上、輸送に携わっている河島運転士は「輸送自体が馬にストレスになるので、いかに減らせるか。年々、設備が良くなって乗り心地も違います」と説明。厩舎が仕上げた競走馬が全力で走れるよう極力、マイナスの要素を減らすための工夫が施されている。

 記者も実際に乗せていただいた。馬室内は気温18度で調整されて想像以上に快適だ。空調設備は数カ所から、あらゆる角度に設置されている。近年の猛暑による暑熱対策が進む中、冷気の伝わり方ひとつからして「進化していますね。馬室の天井の外側部分は遮熱効果がある塗料がされていて、それがあるなしでも全然違いますよ」とうなずく。

 JRAの競走馬輸送は1台で前後2頭ずつ最大4頭まで積み込める。各馬が入るスペースの仕切り板は動かすことができ、テンション次第で幅を広げることも可能。万が一、暴れた場合でも衝撃を和らげるクッションが張り巡らされてケガをしないような素材が使われている。室内には監視カメラがあり、運転席のモニターでその様子を確認。運転席後方で担当スタッフが待機するキャビンにもマットが敷かれ、くつろげる環境が整っている。

 長距離輸送における代表的な疾病である輸送熱においても対策はばっちり。馬のふん尿などが絡み、車内の閉鎖環境で細菌が増殖し、浮遊することに起因するが消臭用具や換気扇、排気口、両側には通気用と開閉可能な窓が多くあることで良質な換気を保ち、リスクの軽減につながっている。

 運転士の技術によるところも大きい。馬運車のほとんどがマニュアル車なのは「オートマだと上り坂でアクセルを踏んだ時に音が出て頑張ろうとするので、滑らかに発進できるように」と衝撃を少しでも和らげることが理由だ。精密機械や美術品を運ぶトラックのように、コンプレッサーで圧縮した空気の圧力を用いるエアサスペンションが導入され、走行中でも揺れは気にならない。「馬運車に入るのを嫌がる馬がいれば車高を落として、できるだけ傾斜をなくしたりします。いろいろ気を使います」と競走馬ファーストの精神だ。運転士の危機管理と馬運車の機能向上が合わさり、今日も競走馬輸送の安全は保たれている。

 《ピエロ輸送で連携 寺島師も信頼》オークス馬ジュウリョクピエロが在籍している寺島厩舎は中野運送店と連携し、輸送のストレス軽減につなげている。寺島師は「一頭一頭にそれぞれ癖があるし、長距離になればなるほどリスクは大きいと思うんですけど担当スタッフと密に話し合って、オーダーに応えていただいています」と信頼を寄せる。ジュウリョクピエロは昨秋に1頭で門別(JBC2歳優駿7着)まで輸送を経験。「あの時は寂しがって少し暴れてしまったんです。馬運車に乗る分には普通なんですけどね。1頭で行くことはなかなかないけど、そのことが分かったのは良かったです」と振り返った。

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