運命の8、9月3歳未勝利戦 21年以降21勝の丹内「“勝ち切る”気持ち」藤原厩舎はフレッシュさ重視
2026年8月19日 05:30 夏競馬の水曜企画は「夏色思い」。記者が夏に関するテーマを考え、深掘りする。東京本社・菊地一(24)が担当する第7回の自由研究は「8、9月の3歳未勝利戦」。JRAでの勝ち残りを懸けた一戦への思いを、2021年以降の同条件で騎手別成績2位の丹内祐次(40)と、調教師別成績1位・藤原厩舎の今井拓也助手に聞いた。
競走馬には避けては通れない道がある。それは“未勝利突破”という関門だ。JRAでは3歳9月中旬まで設けられている未勝利戦で一度も勝利できないと、例外を除き地方への転出および引退を余儀なくされるという制度がある。入れ替わりが激しい世界。競走馬として生き続けるためには、是が非でも1勝が求められる。
未勝利の3歳馬にとって、この8、9月は勝負の月となる。21年以降の8、9月の3歳未勝利で騎手別成績2位(21勝)の丹内と調教師別成績で最多10勝を誇る藤原厩舎の今井助手に「3歳未勝利に懸ける思い」を聞いた。
7月下旬の札幌競馬場。調教を終えた丹内に“8、9月の3歳未勝利でよく勝たれていますね”と話しかけると「よく知っているね!実はそうなんだよ」と笑顔が返ってきた。こんなニッチなデータを知っていることに、私も驚く。彼自身が“3歳未勝利に強い”ことを自覚しているのは、並々ならぬ覚悟で未勝利戦に臨んでいるから。「馬の運命が決まる。3歳未勝利はもう次がないかもしれない。1着を獲れなければ生き残れない。“勝ち切る”という強い気持ちは他の騎手とは違うと思っている」。普段の柔和な雰囲気から一転、表情が引き締まる。“自らの力でJRAに生き残らせる”という騎手としての責務が垣間見えた。注目すべきは4角1番手で回ってきた時の成績だ。21年以降、丹内は4角1番手で迎えたレースが14戦あるが、【11・1・1・1】という驚異的な戦績を挙げている。積極的な騎乗で“勝ち切る”ことを実行しているのだ。
当然、全てのホースマンが勝利を求めている。8、9月の未勝利戦では連闘、中1週でレースを使う割合が20%を超える。勝ち上がるために、より多くレースを使いたいという思いがデータに表れている。だが、藤原厩舎の今井助手は「いかにフレッシュな状態で出せるかを心がけています」と話す。最終盤の未勝利戦では出走馬同士の力量差が少ないため、調子の良しあしが勝敗に直結すると考えているからだ。「馬を触ったり、乗ったりして、疲れていると感じた時は思い切ってレースを使わない。わずかな差を感じ取って、(藤原)先生とコミュニケーションを取るようにしている」と明かす。
レースを使わないことへの不安や焦りはないのか。同助手は「“何としても権利を取らないと”ということもあるけど、ボス(藤原師)はよく“最後は一発勝負や!”と言うんです。肉体的な面でなく、心のフレッシュさも大事。どんな馬、クラスでも心技体が整った状態で送り出すのが、うちの厩舎の方針なんです」と語った。思えば、21年毎日杯を勝ったシャフリヤールは皐月賞には出走せず、ダービーに絞って調整してビッグタイトルを手にした。長年培われてきた“馬ファースト”の精神が、一発勝負となる終盤の未勝利戦での好成績につながっていた。(菊地 一)
《初ブリンカー、内枠先行馬は“買い”》今年の3歳未勝利は9月13日で終了する。残り65戦。記者なりに攻略法を探った。取材を通じて印象的だったのは“一発勝負”という言葉。丹内は「1着を獲れなければ生き残れない。思い切った作戦、特に初ブリンカーは注意しておいた方がいい」と言う。イチかバチかの側面があるため初ブリンカーの勝率は5.7%と低めだが、単勝回収率は138%と高い。芝レースに限定すると単勝回収率は214%に跳ね上がる。もう一つは4角1番手で回ってきた馬の単勝回収率383%というデータ。該当馬のうち枠順別成績に目を向けると1枠が勝率トップの36.1%で単勝回収率は驚異の791%だった。内枠先行馬は徹底して“買い”だ。



