オースミハルカ飛躍導いた若武者・川島

2020年7月31日 05:30

04年にクイーンSを制した川島とオースミハルカ

 【競馬人生劇場・平松さとし】今週末に行われるクイーンS。このレースを2003、04年と連覇したのがオースミハルカ。騎乗したのは当時まだ21、22歳の川島信二騎手だった。

 栗東・安藤正敏厩舎から01年にデビューした同騎手だが実は東京出身。美浦からのデビューを望む同期が皆、関係者との血縁があることが分かると、自ら栗東所属を希望した。「自分は父が競馬ファンというだけで関係者との縁は全くありませんでした。これでは不利になると思い、栗東行きを決断しました」

 こうして面倒を見てもらうことになったのが安藤正敏調教師(引退)だった。川島騎手は初めて厩舎に行った日、この師匠から一本のムチを渡された。1991年にリンデンリリーでエリザベス女王杯(G1)を優勝しながらも93年1月に落馬。24歳で帰らぬ人となった厩舎の先輩、岡潤一郎元騎手が使用していたムチだった。師匠の弟子を思う気持ちが察せられるエピソードだ。

 そんな師匠が管理していたのがオースミハルカだった。03年に同馬と共にオークスに挑む(10着)と続いて臨んだのがクイーンS。当時7戦6勝で有馬記念(G1)が唯一の敗戦というファインモーションが出てきたが「開幕週なので前へ行こう」と川島騎手が決め、初めて逃げたオースミハルカはファインモーションを首差しのぎ、逃げ切り。穴をあけてみせた。

 翌年のクイーンSも逃げ切った川島騎手とオースミハルカのコンビはその後、府中牝馬S(G3)も優勝。生まれ故郷に錦を飾って父を喜ばせた川島騎手とオースミハルカは、続くエリザベス女王杯(G1)を2着。さらに翌年の同G1でも2着。故岡騎手が制したG1にあと一歩足りなかったが強敵を相手に好騎乗を披露した。「勝ち馬はアドマイヤグルーヴとスイープトウショウでした。運がなかったです」

 さて、今週末のクイーンSでも近い将来G1で好走する馬が誕生するだろうか。注目したい。(フリーライター)

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2020年7月31日のニュース