【秋華賞】ミヤマザクラ95点 秋に“満開”ひと夏越えてトモふっくら急成長

2020年10月13日 05:30

<秋華賞>ひと夏越えて、明らかにボリュームを増したミヤマザクラ

 牝馬3冠ロードに深山桜の乱れ咲きだ。鈴木康弘元調教師(76)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第25回秋華賞(10月18日、京都)ではミヤマザクラをデアリングタクト、リアアメリアとともに1位に指名した。達眼が捉えたのは桜の開花を告げるようなミヤマザクラのトモ(後肢)の膨らみ。一方、史上初の無敗牝馬3冠に挑むデアリングタクトの馬体には疑問符をつけた。

 重要文化財のふすま絵などで知られる京都の名刹(めいさつ)、妙蓮寺では10月半ばになると、桜が白や淡紅色の花弁を開きます。13日に迎えた宗祖・日蓮の忌日に合わせるように一斉に咲くため「御会式(おえしき=宗祖の忌日の法会)」にちなんで「御会式桜」と呼ばれているとか。品種は八重や半八重の花を10月に咲かせるジュウガツザクラ。この桜の花びらを持ち帰ると、恋が成就するとの言い伝えもあります。

 妙蓮寺から琵琶湖を挟んで33キロ東に位置する栗東トレセン。この関西の調教拠点でも10月を待って桜が鮮やかに咲きました。白い花弁を広げたミヤマザクラ。オークス以来5カ月ぶりの出走ですが、当時よりも明らかにボリュームが増しています。特に変化したのがトモ。筋肉量を増やし、桜の花びらのように丸みを帯びてきた。3歳のひと夏を越しての成長が伝わってきます。腹周りも春以上にふっくらとしている。夏の充電を完了してエネルギーが満タンになった腹袋です。つぼみを硬く閉ざした少女の体からふくよかな成熟した女の体へ。香り立つような満開の桜です。

 顔つきもりりしくなった。キャリアを積んだプロの競走馬らしい面構え。それでいながら、気負いもなく、ゆったりと立っています。妙蓮寺の本堂の前に植えられた御会式桜のような悠然たるたたずまい。このゆとりが中距離戦では大きな長所になります。

 ミヤマザクラの花びらを持ち帰ると、万馬券的中の願いが成就する。そんな言い伝えはありませんが、良くもあしくも春と変わらないデアリングタクトとは対照的な変わり身です。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の76歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

特集

2020年10月13日のニュース