【秋華賞】松山 快挙自信深めた愛馬のメンタル面成長「走りに力みない」

2020年10月13日 05:30

松山はデアリングタクトの成長を実感

 秋競馬はG1シリーズが再開。今週日曜(18日)の牝馬3冠最終決戦「第25回秋華賞」で主役を張るのが桜花賞&オークス馬デアリングタクトだ。この2冠牝馬を連日、取り上げる連載「無敗で挑む デアリング3冠へのタクト」がスタート。史上初となる無敗の牝馬3冠制覇へ。チーム一丸で偉業にチャレンジ。連載初日は頼れる鞍上・松山弘平(30)に迫った。

 歴史的な記録達成に胸が高まってくる。こんな体験をできるジョッキーはひと握りだ。大勢のファンの期待を背負っている松山だが「いよいよだなって感じですね。お客さんの前でいいレースができれば」と普段と変わらない口調で答えた。その甘いマスクからは想像できないほどの強心臓。それだけ自信があるということか。デビュー12年目・中堅ジョッキーの表情からは余裕さえ感じられた。

 現時点では初年度産駒にして父エピファネイアの最高傑作と言える存在だ。デビューから無傷の4連勝で牝馬2冠達成。どれも圧倒的な強さで同世代のライバルを蹴散らした。「全てのレースで強い競馬をしてくれています」と松山はパートナーをべた褒め。その中でも自身にとって貴重なレースがひとつある。「僕の中でベストレースはエルフィンSですね」。桜花賞やオークスではなく、デビュー2戦目をチョイスした。

 「あのレースは僕が思い描いた通りの騎乗ができました。新馬戦でいい脚を使えることは分かったので、控える競馬を試しましたが、それに馬がキッチリ応えてくれた。手応えをつかんだ一戦でした」

 備わっている末脚は並の威力ではない。あの時の控える競馬が名牝への道を切り開いた。その後、桜花賞→オークスを制覇。誰が見ても実績&実力ともに完璧だが、松山は春シーズンを「まだ成長不足なところがあった」と振り返る。

 「桜花賞からオークスで凄く成長を感じましたが、もっと気性が大人になってほしかったんです」

 さらなるステップアップへ、メンタル面の成長は不可欠だった。夏場はたっぷり充電期間に充てて9月上旬に栗東に帰厩。そして3週前追い切りで久しぶりにまたがると衝撃を受けた。

 「以前と比べて走りに力みがなくてコントロールしやすくなりました。ひと夏を越してホントに良くなったし、オークスから一段と成長しています」

 これで最後のピースは埋まった。松山は「馬の力を信じて乗るだけです」と信頼を寄せる。史上初となる無敗の牝馬3冠を成し遂げたとしても、それも序章に過ぎない。秋を迎え、新たな伝説が幕を開ける。

 ◆松山 弘平(まつやま・こうへい)1990年(平2)3月1日生まれ、兵庫県神戸市出身の30歳。JRA競馬学校騎手課程第25期生。09年に池添兼厩舎所属でデビューし、11年2月にフリーになる。17年皐月賞を9番人気のアイルアインで制し、中央G1初勝利を挙げた。JRA通算9196戦732勝。

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