【ジャパンC】アーモンドアイ・根岸助手、最後も一番近くでうれし涙を
2020年11月26日 05:30 偉業達成の天皇賞・秋。引き揚げてきたアーモンドアイの馬上で涙するルメール。そのすぐそばで、同馬を担当する根岸真彦助手(37)も涙を流していた。
ゲート裏まで付き添い、レース中は移動用バスの車内。車窓からは形勢が分からなかった。「ゴールの瞬間は正直負けたかな…と。“勝ったのはアーモンドアイ”と実況が聞こえて本当にホッとしました」。歓喜。安ど。不意に目に涙が浮かんだが、他陣営への気遣いから感情を押し殺した。「グッと我慢しました。でも、出迎えた時にルメールさんが泣いててダメでしたね(笑い)。完全にもらい泣き、うれし涙です」。涙がこぼれ落ちてからの記憶はほとんどない。
日本一の競走馬を任される重圧は想像を絶する。思い悩み、眠れない夜を過ごしたこともあった。特に、爪に不安を抱えていた秋華賞は苦悩した。「調整が難しかっただけに勝ったときは本当にうれしかった」。3冠達成を厩舎の仲間と喜び合った瞬間が一番の思い出。「プレッシャーは常に感じているけど、つらいとは思いません。国枝厩舎はチームワークがいい。何かあれば、皆がサポートしてくれますから」。“チーム・アーモンドアイ”一丸で名馬を支えている。
近づく別れの日。「競走馬はいつか引退するもの、と分かってはいますが、あの走りがもう見られなくなるのは寂しいです」。厩舎に届くファンレターは、その一つ一つに目を通している。つづられているのは感謝、激励の言葉。アーモンドの飛ぶような走りが、足が不自由な女性に勇気を与えていることも知った。「ファンの皆さんにこれだけ愛される馬を担当できた。終わってみれば、全てがいい思い出…になるのかな(笑い)」。集大成の11・29。アーモンドを一番近くで見てきた男の願いは一つ。最後もうれし涙で。
◆根岸 真彦(ねぎし・まさひこ)1982年(昭57)12月6日生まれの37歳。国枝厩舎の調教助手。06年に美浦トレセンに入った。担当馬の重賞初勝利はタンタアレグリアの17年AJC杯。同年、アーモンドアイと出合う。「デビュー前から素質は凄く感じていたけど、まさかこれだけの馬になるとは」。思い出のレースは18年秋華賞。