名物長丁場レースで受け継がれる横山家“名手の血脈”
2020年12月4日 05:30 【競馬人生劇場・平松さとし】G1・チャンピオンズCが注目される今週末だが、中山競馬場では暮れの名物レース・スポニチ賞ステイヤーズSが行われる。
芝3600の長丁場。“長距離は騎手”と言われるように、このレースの勝利騎手も名手の名が並ぶ。古くは1988~94年の7年間で、岡部幸雄騎手(引退)が5回優勝。ちなみに同騎手は98年、2002年にも勝っている。
現役に目を移すと、何といっても横山典弘騎手の活躍が目立つ。99年にペインテドブラックで優勝したのを筆頭に、13、14年にデスペラードで連覇など計5勝。現役騎手の中ではR・ムーア騎手の3勝、蛯名正義騎手、ペリエ騎手の2勝を抑え、断トツの勝ち数だ。
中でも私がよく覚えているのはデスペラードの1回目の優勝時。横山典騎手が最初にこの馬に乗ったのは直前のアルゼンチン共和国杯。元々追い込み脚質の同馬で、いつも通り後方から行くと最後に良い脚で追い込んだものの6着。下馬した横山典騎手がボソッと「もっと前で走らせても大丈夫そうだな…」と言ったのが印象に残った。すると、続くステイヤーズSでは好位で立ち回った。そして、最後は力強く抜け出した。2着に3馬身半の差をつけて快勝してみせたのだ。
そんなベテランの手綱さばきは今年も健在。11月29日までの競馬を終えて55勝で関東リーディング5位。重賞はノームコアで制した札幌記念など6勝もしている。2人の子息である横山和生騎手、武史騎手もいて、気の休まるところもないだろうに立派なものである。
ちなみに2人の子息も共に今年、重賞を勝利。武史騎手に至っては現時点で関東トップとなる82勝を挙げており、今週のステイヤーズSではボスジラの手綱を取る予定だ。果たして父の乗るオセアグレイトが行く手を阻むのか?注目したいところだが、最後にもう一つ逸話を加えておこう。横山典騎手の父・富雄元騎手(故人)も67年にリコウという馬を駆ってステイヤーズSを勝っている。長距離でものを言う名手の血は脈々と継がれているのだ。(フリーライター)