古川奈穂、最速JRA初勝利!進学校中退し騎手になった20歳のニューヒロイン「1着は格別です」
2021年3月14日 05:30 この笑顔を待っていた。藤田菜七子以来、5年ぶりに誕生したJRAの女性騎手・古川奈穂(20)が13日の阪神6Rを1番人気バスラットレオン(牡3)で逃げ切って初勝利。3月1日の免許交付から13日目の初白星はJRA女性騎手史上最速。通算12戦目も西原玲奈(引退)の9戦目に次ぐ快速白星となった。1月5日以来、67日ぶりに入場再開となったスタンドからはファンの拍手がやまなかった。
丸い顔に瞳がくりくりっと動く。夢に見た初勝利の記念撮影。67日ぶりに競馬場に戻ったファンから大きな拍手を浴びると古川奈は少し照れてみせた。「うれしい気持ちでいっぱい。多くの方から馬を信じて乗れば大丈夫と声を掛けてもらっていた。焦らず騎乗することができた」
7番枠からサッと先手。相棒のバスラットレオンはG1(朝日杯FS)4着の格上馬だ。直線でインから迫られても追い出しを待った。残り250メートルで左ムチ。残り150メートルで右から見せムチ。女性新人の特典である4キロ減も加わり、馬が反応。一気に突き放し、単勝1.9倍に応えて逃げ切った。
「力のある馬を用意していただき矢作先生、スタッフ、オーナーに感謝しています。1着は格別です」。先週は9鞍騎乗して4着が最高。馬とのリズムの悪さを指摘され早速、修正した。ムチの持ち替えの早さも披露。技術は急速に上がっている。
ゼロからのスタートだった。12年有馬記念。ゴールドシップの快走で競馬を意識し、藤田菜七子の活躍で騎手になると決心。医師を父に持ち、中高一貫の進学校・広尾学園高に通っていたが中退。競馬学校では乗馬経験者との差を痛感し、左肩負傷で留年もしたが、広尾学園クラスメートのビデオメッセージを見て自らを鼓舞した。
3月1日に騎手免許を取得。13日目での初勝利はJRA女性騎手では17日目の増沢由貴子(旧姓牧原)を抜いて史上最速となった。中山の藤田菜七子は「おめでとうございます。私も負けないように頑張ります」とメッセージを贈った。
矢作師も肩の荷が下りた様子。「G1並みに緊張したよ。上手に乗れていた。これからも全力でバックアップします」。今日は中京で3鞍。8Rでは同期の永島まなみ(18)と初めてぶつかる。「女性騎手でなく、一人の騎手として注目されるようになりたい」。その夢に向け、まずは第一歩を踏み出した。
【名手たちの初白星】古川奈は12戦目、免許取得13日目でのJRA初白星。3月1日に勝てば“免許取得その日”のVになるが、01年以降、長谷川浩大(現調教師)、松山弘平、泉谷楓真の3人が3月1日に初白星をマークしている。名手が何戦目で初勝利を手にしたかでいえば、今や関東の顔・田辺裕信(37)は64戦目。期待の星・横山武史(22)は42戦目。その父・典弘(53)は21戦目。武豊(51)は5戦目。藤田菜七子は地方・浦和(16年3月24日)で初勝利。JRA初Vは51戦目だった。
▼広尾学園 東京都港区南麻布にある中高一貫の私立校。最寄り駅は東京メトロ日比谷線広尾駅。1918年(大7)開校の女子校「順心女子学園」から2007年(平19)に改名し共学化。昨年は東大3人(既卒者含む)をはじめ東工大、お茶の水女大、早大、慶大など難関大合格者が多数。進学校として人気を集める。主な卒業生に女優の中山麻理、作家の江國香織氏。
◆古川 奈穂(ふるかわ・なほ)2000年(平12)9月13日生まれ、東京都出身の20歳。栗東・矢作芳人厩舎所属。中学時代は陸上競技に励む。広尾学園高中退後、競馬学校入り。趣味は歴史(特に幕末)、謎解き、数独、音楽鑑賞。好きなアーティストは福山雅治。モットーは「精神一到」。目標騎手は武豊。スポーツビズとマネジメント契約し、オフィシャルSNS(インスタグラム、フェイスブック)を開設。1メートル54.6、44.8キロ。血液型A。