【桜花賞】サトノレイナス100点 2冠の大器 桜は通過点、驚異の成長力

2021年4月6日 05:30

春の主役になりそうなサトノレイナス

 桜と共に樫の女王にも手が届く驚異の成長力だ。鈴木康弘元調教師(76)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。「第81回桜花賞」(4月11日、阪神)ではサトノレイナスに唯一満点をつけた。達眼が捉えたのは先週の大阪杯を制したレイパパレと同じ部位の進化。昨年の阪神JFでは白毛の女王ソダシの鼻差2着に敗れたが、劇的な馬体の変化がリベンジを可能にする。

 馬名には名付け親であるオーナーの願いが込められています。サトノレイナスの「レイナス」とはスペイン語で「女王たち」。1人の女王を意味する「レイナ」ではなく、複数形の「レイナス」と命名したのはなぜか。ビロードのような薄い皮膚に包まれた馬体がその理由を語ってくれます。

 ひと目で素質の高さが伝わってくるバランスの整った体。首から背中、腰にかけて流麗なトップラインを描いています。その輪郭にはしなやかな走りを可能にするディープインパクト産駒らしい柔軟な筋肉。背中と腹下の奥行きはマイル路線を一緒に歩んできた同期のライバルと一線を画している。中長距離適性を示す“長背長腹”の体形です。桜花賞と共にオークスも期待できる、桜と樫の女王候補。春の牝馬2冠獲りを可能にするのが3歳春を迎えての目覚ましい成長ぶりです。

 昨年の阪神JF時には抜けていなかったキ甲(首と背中の間の膨らみ)が発達してきた。それに合わせて首差しが奇麗に抜け、肩やトモも盛り上がっています。大阪杯で大金星を挙げたレイパパレの馬体診断でもキ甲が発達したと指摘しましたが、レイナスも大人の体つきに変わってきた。トモ(脛=すね)と前肢(前腕部)の筋肉にうっすらと浮き出る血管。阪神JF時には見られなかった。ビロードのような薄い皮膚を持つ馬が鍛え込まれると、こういう血管が映るのです。毛ヅヤも前走時より輝いている。

 顔つきには気性の成長が表れています。穏やかに耳を立て、ゆとりをもってハミを受けながら、目には獲物を追うような鋭い光を宿しています。可愛い目がプロの競走馬らしい目つきに変わった。

 4カ月の休養明け。腹周りには多少余裕がありますが、1週前の馬体だけにこれでちょうどいい。今週のひと追いと阪神への輸送で絞れるからです。複数の女王を意味するレイナス。まずは桜の女王へ、非の打ちどころがない体つきになりました。 (NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の76歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。

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