「彼らは自然と育つ」小桧山師 新米騎手への“親心”
2021年8月20日 05:30 【競馬人生劇場・平松さとし】今週末、札幌競馬場では札幌記念(G2)が行われる。ここに出走を予定しているのがトーラスジェミニ(牡5歳、美浦・小桧山悟厩舎)。鞍上は横山和生騎手だ。同騎手の父親は天才・横山典弘騎手。弟が武史騎手。弟は昨年関東リーディングを獲り、今年は皐月賞(G1)で自身初のG1制覇。先週の札幌では1日に6勝するなど活躍が目立つが、兄の和生も今年すでに52勝。関東リーディング3位に躍進している。
しかし、トーラスジェミニを管理する小桧山調教師は、同騎手が好成績を残すようになったから依頼したというわけでは決してない。
「和生に誰も注目していない頃から乗せていますよ」
小桧山師は笑いながらそう言うが、これは何も大げさな話ではない。横山和騎手はデビューした2011年、新人ということもあり、194鞍の騎乗で4勝に終わった。そんな中、小桧山師が彼を乗せたのは26レース。和生騎手の騎乗馬の13・4%は小桧山厩舎の馬だったのだ。
「誰も乗せないような若手や地方のジョッキーも乗せますよ。だって僕らがいくら頑張ったって騎手にはなれません。つまり騎手は努力してなれる商売ではないんです。彼らはこちらが邪魔さえしなければ自然と育つのです」
師の騎手に対する持論だ。ちなみにトーラスジェミニは前走の七夕賞(G3)で同馬にとって初の重賞勝利を記録したが、それが師のJRA通算200勝となる節目の勝利でもあった。当時、それを祝福すると、師は照れ隠しか「前日の2歳未勝利戦に走ったトーセンヴァンノで達成するつもりだったんだ。不利があって負けたけど、上のクラスでも通用する馬ですよ」と笑って言った。結局トーセンヴァンノは未勝利のまま先週のコスモス賞(オープン)に出走すると見事に優勝。小桧山師にとって201回目の勝ち星となったが、手綱を取った山田敬士騎手はこれが今年の初勝利。横山和騎手のように将来的にはもっともっと勝てるようになると小桧山師は信じていることだろう。(ターフライター)