ハーツクライのキングジョージ3着 適性の前に絶対的能力

2022年7月22日 05:20

06年のキングジョージで3着に終わったハーツクライ(右端)(左端は1着のハリケーンラン、中央は2着のエレクトロキューショニスト)(AP)

 【競馬人生劇場・平松さとし】
 今週末の23日、英国ではキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1)が行われる。

 欧州の2400メートル路線の最高峰として凱旋門賞(G1)と並び立つこの大一番で、過去に1頭だけ3着に好走した日本馬がいる。06年のハーツクライだ。ダービー(G1)や宝塚記念(G1)で2着するなど4歳の春までは勝ち切れないイメージが強かったが、秋になるとジャパンC(G1)でアルカセットの2着。当時のレコード決着を鼻差まで迫ると続く有馬記念(G1)ではディープインパクトを破り優勝。年が明けるとドバイへ遠征。ドバイシーマクラシック(G1)も制し、ここに挑んだ。

 当時、同馬を管理していた橋口弘次郎調教師(引退)はこの遠征の経緯を次のように言った。

 「ドバイを勝った時にリップサービスのつもりでつい“次はキングジョージ!!”と言ってしまったら、それが本当になりました」

 英国ではニューマーケットのL・クマーニ調教師(引退)の厩舎に入厩した。“ハーツクライの馬主である社台RHの吉田照哉代表が現地で走らせている馬を預けていた調教師”という理由で、ここに入ったのだが、これが偶然にもジャパンCでハーツクライを破ったアルカセットの調教師だったのは皮肉なものだ。

 さて、結果は先述した通り3着に敗れたが、直線では先頭に立とうかという場面を演出した上、最後も勝ち馬からわずか1馬身差。勝ったのが前年の凱旋門賞馬ハリケーンラン。2着はこの年のドバイワールドC(G1)の覇者で前年のインターナショナルS(G1)ではゼンノロブロイを破ったエレクトロキューショニスト。さらに4着以下にも凱旋門賞2着馬や香港C(G1)3着馬など実力馬がそろっていた。ここで僅差の3着に好走したのだから立派なものだ。

 欧州への挑戦はとかく馬場適性が重視されがち。しかし凱旋門賞におけるエルコンドルパサーやディープインパクト、オルフェーヴル、そしてこのハーツクライを見てもまず大事なのは絶対的な能力。それなくして好走はあり得ないだろう。(フリーライター)

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