【追憶のチャンピオンズC】JCダート時代の02年 イーグルカフェの勝因は天才デットーリ
2022年11月30日 07:00 1997年生まれの外国産馬には、異才がそろっていた。タップダンスシチー、アグネスデジタル、エイシンプレストン、ノボジャック…と馬名を列挙すると、「これ全部、同期だった?」と驚かないだろうか。
この世代の外国産馬で最初に名を上げたのはエイシンプレストン。朝日杯3歳S(当時、現朝日杯FS)を制した世代最初のG1勝ち牡馬は、のちに香港でG1を3勝する香港マスターとなった。アグネスデジタルは当時G2格付けの全日本3歳優駿を勝ったが、3歳でマイルCSも勝ち、芝ダート二刀流の泰斗となる。そして南部杯→天皇賞・秋→香港C→フェブラリーSという空前にしておそらく絶後の地方ダート・中央芝・海外芝・中央ダートのビッグレースを4連勝。また8歳まで活躍して金鯱賞3連覇、G1を2勝のタップダンスシチー。地方交流重賞を6連勝含む8勝したノボジャック。個性的かつ、現代では信じられないほどタフなローテーションばかりだった。
この系譜に連なる一頭を思い出そう。アグネスデジタル、ノボジャックも出走した00年NHKマイルC覇者。イーグルカフェだ。
イーグルカフェはNHKマイルCを制覇したあと、同年の天皇賞・秋で4着に好走(勝ち馬テイエムオペラオー)したものの長い低迷期に入る。次の勝利は2年2カ月のち、キャリア28戦目の02年七夕賞。続く札幌記念で8着だったあと、マンハッタンカフェの凱旋門賞遠征に帯同してフランス遠征。G2ドラール賞で3着に入った。
遠征帰りで出走したのが02年ジャパンCダート(チャンピオンズCの前身)。この年は東京競馬場の改修に伴って、中山ダート1800メートルで開催。ジャパンCの前日である11月23日(土)に行われた。遠征を挟んで同年11戦目を迎えていたイーグルカフェだが、前年武蔵野S2着でダート適性も示していたこと、鞍上が全盛期のフランキー・デットーリであり5番人気。ただし下馬評は2強。アドマイヤドンVSゴールドアリュールという構図で両馬が単勝2・2倍と2・6倍。3番人気の岩手トーホウエンペラー9・7倍で、イーグルカフェの単勝は20・8倍。あくまで鞍上込みで3番手争いの一角という評価だった。
このレース、現場で見ていてあっけにとられた。イーグルカフェは道中、中団。徐々に進出していたが、特に大きなアクションもなく4コーナーで好位先行するゴールドアリュールの直後にいつの間にかいた。「武(豊)さんをマークしていた」とデットーリ。直線ではゴールドアリュールの直後から、スリップストリームを抜け出して内をズバッと抜け出す。信じられないほどぐいぐい伸びた。
「ドラール賞でイーグルカフェを見ていた。いい末脚が使えることは分かっていたよ」
そのドラール賞でデットーリは6着馬バーネビューに騎乗していた。親交ある小島太調教師の管理する日本馬が遠征に来たので、気にはしていたのだろうが、能力や気質を完全に把握していた。3コーナーから早々と有力馬の直後につけた仕掛けについて「中山はコーナーがタイトだし、直線が短い。あの位置でないと届かないだろう?」とウインク。もちろん検量に帰ってきて下馬の際にはフライング・ディスマウント(デットーリ・ジャンプ)を「ワーオ!」の歓声と共に披露した。
何もかも規格外としか言えない勝利だった。小島太調教師は「フランキーは凄い男。彼ならやってくると思っていたよ」と満面の笑み。「ウチの愛犬も名前はフランキーなんだ」というエピソードもサービス。イーグルカフェは芝ダートG1の勝ち馬となった。
ゴールドアリュールは目標にされて早めにかわされ踏ん張りきれず5着。アドマイヤドンはイーグルカフェに先んじて仕掛けられる形になり伸び負けて3着。直線勝負に懸けた13番人気リージェントブラフが2着に食い込んだ。
翌日のジャパンC、デットーリはイタリア馬ファルブラヴに騎乗して、コーリー・ナカタニ騎乗の米国馬サラファンと激しい追い比べの末、鼻差勝ち。サラファン陣営が異議申し立てをするなど国際レースらしい一幕もあったが、ともあれ02年の中山ジャパンCウイークはフランキー・デットーリが全てを支配した。