【有馬記念】誰にでも忘れられないHEROがいる 本紙・万哲がハーツクライを語る スポーツ7紙特別企画
2022年12月20日 12:00 20日のスポーツ7紙は有馬記念特別企画を掲載。
25日に迫った有馬記念に向け、スポーツ7紙それぞれを代表する記者が過去の有馬記念優勝馬について思い出を語っている。
スポニチは万哲こと小田哲也記者が05年の有馬記念優勝馬「ハーツクライ」の取材当時の思い出を語った。
その年の有馬記念ウイークは栗東トレセンで奔走したので忘れようもない。無敗3冠を達成したディープインパクト一色。ハーツクライの橋口弘次郎厩舎の管理馬は当時、木曜追いが通例だった。
しかし、時ならぬ大雪予報。「1日早めても影響はない」。水曜追いに踏み切った英断が吉になろうとは…。果たせるかな。翌木曜、滋賀県は大寒波が襲い、栗東は横殴りの吹雪。調教コースも瞬く間に銀世界に。大本命ディープも水曜に追っていて事なきを得たが、今思えば衝撃の予兆だったかも?
ハーツには「善戦マン」のありがたくない称号も付こうとしていた。3歳春のダービー(2着)から10戦連続でなぜか白星に見離されていた。コーナーを回るのがちょっぴり苦手。そんな不器用でも実直な生き様が好きだった。直前のジャパンC(2着)はアルカセットと約3㌢差。力は十分に蓄えていた。
世紀の脚質転換。強烈な末脚が代名詞だったのに3戦連続で手綱を取ったクリストフ・ルメールは1周目スタンド前で4番手を奪った。えっ、えっ?ディープが届かなかったのは分かった。16万観衆の驚嘆の中で我を忘れ、気付いた時には橋口師の優勝インタビュールームにいた。「まるで、夢を見ているよう」(橋口師)ハーツがGⅠ挑戦10戦目で悲願の初戴冠なら、2002年初来日以来すっかり日本びいきの鞍上は記念すべきJRA重賞初制覇が有馬記念になった。
キングカメハメハ、ダイワメジャー、ブラックタイド。長らく種牡馬としても逸材揃いだった2004年クラシック組の黄金世代。偉大な血はワンアンドオンリーに継がれ、ハーツにも騎乗した横山典弘に導かれ、名伯楽の悲願だったダービー制覇に導いた。リスグラシューは有馬記念を勝ち、ドウデュースが今年再びダービーを射止めた。何という生命力。今年の有馬にもハーツはもちろん、ディープの血を引いた馬が参戦している。血統図のどこかにその名前があるだけで、栗東の雪景色が蘇ってくる。