【菊花賞】サトノグランツ 咲き誇る友道厩舎の長距離愛、史上初父子3代制覇へ
2023年10月18日 05:30 3冠牝馬誕生の余韻が残る中、今週は牡馬クラシック3冠最終戦「第84回菊花賞」(22日、京都)だ。秋のG1新企画「馬(バ)チェラー」では前線記者が買いたい馬の魅力をアピールして「真実の馬券」に迫る。栗東トレセンで新谷尚太が徹底取材。神戸新聞杯の覇者サトノグランツを猛プッシュしてきた。3000メートルの長丁場は望むところ。長距離王国・友道厩舎の期待馬が存在感を示す。
栗東の名門・友道厩舎が今年も菊花賞に参戦する。これで10年連続。09年の初出走から16頭を起用するだけでも凄い。しかも12年5番人気2着スカイディグニティ、17年13番人気3着ポポカテペトル、18年2番人気2着エタリオウ、10番人気3着ユーキャンスマイル、19年3番人気Vワールドプレミアと人気以上の走りで馬券に絡んだケースが目立つ。友道師は「僕自身、中長距離戦が好き」と公言。「(セリでも)中距離以上が合いそうな馬を選んでしまう。また、馬主さんからも、そういうタイプの馬を預けていただく機会が多い」と口にする。
02年11月の厩舎開業後、JRA・G1初制覇が京都のマラソンレースだった。08年天皇賞・春でアドマイヤジュピタが勝利。ワールドプレミアでは19年菊花賞に加え、21年天皇賞・春(阪神)をものにした。芝2400メートル以上が長距離戦とすれば10頭でダービー3勝を含む重賞18勝。21年菊花賞は神戸新聞杯2着をステップに参戦したレッドジェネシスが1番人気に支持され、この年は13着に敗れたがファンにも長距離戦の強さを認知されている。その要因は何か?普段の調教はCWコース(ウッドチップ1周1800メートル)が中心。より長い距離を乗ることでスタミナを強化する調教方法を取り入れている。道中、力を抜き、ゆったり走らせることがレースにもつながる。元々の適性だけでなく、日頃の鍛錬が「長距離王国」を築き上げているのだ。
今年、起用するサトノグランツも菊花賞Vを意識できる存在だ。京都新聞杯の勝利から中2週で参戦したダービーこそ11着に敗れたが夏場の放牧で充電完了。今季初戦の前走・神戸新聞杯は前半1000メートル通過が61秒2のスローペースで前が有利な展開にもかかわらず中団のインからズバッと差し切った。折り合いの不安がなく、常に落ち着いて走れる点が強み。この厩舎らしい長距離ランナーとしての資質がレースぶりに表れている。友道師は「前走の瞬発力を見ると春より凄みを増した走りになっている」と夏を越しての成長をアピールする。
京都芝3000メートルは2度の坂越えがあるタフな条件。距離に違いはあっても今春にリニューアルオープンしたコースを経験(出走予定馬で4頭だけ)しているのはアドバンテージになる。「エンジンのかかりは遅いけど、その分、坂の下りを利用してスピードに乗せていける。スタミナはあるし、距離に対する不安はない」と適性を強調する。休み明けをひと叩きし、中3週で調整は順調そのもの。「コースレコード(2分23秒5)で前走を走ったダメージもなく、いい状態で来ている」。ラスト1冠奪取へ。舞台設定が追い風になる。
◇友道 康夫(ともみち・やすお)1963年(昭38)8月11日生まれ、兵庫県赤穂市出身の60歳。大阪府立大の獣医学部を卒業後、89年9月に栗東・浅見国一厩舎のスタッフに加わる。松田国英厩舎を経て01年に調教師免許取得、02年11月に開業。08年天皇賞・春をアドマイヤジュピタで勝ち、G1初制覇。ダービーは16年マカヒキ、18年ワグネリアン、22年ドウデュースで3勝している。JRA通算4802戦695勝、うちG117勝を含む重賞62勝。
《川田もう一丁!》サトノグランツの鞍上・川田将雅(38、写真)は15日の秋華賞をリバティアイランドで制し、牝馬3冠ジョッキーの称号を手にした。先週終了時点で今年JRA127勝。2年連続の全国リーディング獲得へ、2位・ルメールに2勝差で首位をキープしている。今春はウシュバテソーロとのコンビで日本人騎手初のドバイワールドCを制覇し、世界に名をとどろかせた。10年ビッグウィーク以来、2度目の菊花賞制覇にチャレンジする。
《加速してからの爆発力は父譲り》サトノグランツの父サトノダイヤモンドは現役時代、栗東・池江泰寿厩舎で16年菊花賞、有馬記念V。現3歳世代が初年度産駒となる。父は他厩舎とあって、あくまでもイメージながら友道師は「ダイヤモンドは馬格があり、切れる脚を使う印象があった。グランツはポチャッとした体形。父ほど切れないけど加速してからの爆発力は似ている部分かな」と父子の姿をダブらせる。勝てば祖父ディープインパクトから続く父子3代制覇。天皇賞では過去に70年秋メジロアサマ、82年秋メジロティターン(当時は秋も距離が3200メートル)、91年春メジロマックイーンが父子3代制覇を飾ったが菊花賞で達成なら史上初だ。
また、里見治オーナーが友道厩舎に預託したのは21年にデビューしたサトノヘリオス(4歳2勝クラス)が初めて。サトノグランツ、サトノシュトラーセ(2歳1勝クラス)の計3頭で【7・3・2・9】と勝率33.3%、連対率47.6%の好成績。15日に京都芝2000メートルでサトノシュトラーセが2歳未勝利戦を勝ったばかり。いい流れが来ている。