【追憶のチャンピオンズC】JCダート時代の02年イーグルカフェ 天才が見せたスーパー・ライディング

2023年11月29日 06:45

02年のジャパンカップダートをイーグルカフェで勝利して「フライングディスマウント」を決めるデットーリ(02年11月撮影)

 チャンピオンズCが、まだその前身である「ジャパンCダート」だった02年の話。当時は土曜にジャパンCダート、日曜にジャパンCが行われる豪華な週末となっていた。

 その「ジャパンCダート」時代の白眉が、この02年。ランフランコ・デットーリが土曜にイーグルカフェでジャパンCダートを勝ち、日曜はファルブラヴでジャパンCを優勝。2日で2000万円余を手にした伝説の週末だ。

 ジャパンCダートのパートナーは5番人気のイーグルカフェ。3歳時にNHKマイルCを制したが、その後20戦、白星から遠ざかった。02年夏の七夕賞を制したが、ダートはそれまで7戦して全敗。5番人気は、むしろ“意外と人気になった”ように思えた。

 人気になった要因はもちろんデットーリへの期待だ。その思いに応えるスーパー騎乗だった。1コーナーを8番手で回ったが、向正面で位置を上げ、4角では3番手。先団のインにいた外国馬が下がると、サッとインへ。アドマイヤドン、ゴールドアリュールという日本のエース2頭をインからかわし、1馬身差をつけてゴールに飛び込んだ。

 「中山はコーナーがタイト。だから4角であの位置にいなければ届かない。イーグルカフェが最後にいい脚を使えることも分かっていた」。その騎乗ぶりは“天才”と称されるが、やはり情報を徹底的に集め、的確に分析しているのだと思わせた。

 小島太師は眼鏡を外し、そっと涙を拭った。「フランキーは凄い男。絶対にやってくれると思っていたんだ」。ほんの1カ月半前の凱旋門賞。同師は厩舎のエースであるマンハッタンカフェを送り出したが13着に敗れ、屈腱炎を発症して引退に追い込まれた。

 マンハッタンカフェと同じ勝負服を着たデットーリ。普段から世話になっている小島太師を何とか元気づけたかった。その思いは最高の形で届いた。「運命的なものを感じずにいられない…」。師は涙が止まらなかった。

 24時間後のジャパンC。デットーリは9番人気ファルブラヴをVに導き、G1を連勝。“生ける伝説”の剛腕ぶりに日本中の競馬ファンは驚嘆し、社台ファームの吉田照哉氏は「彼が乗ると5馬身違う」と最大級の褒め言葉でその手腕を表現した。

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