馬の「食」支える縁の下の力持ち 飼料専門「市原商店」に潜入

2024年8月28日 05:30

市原商店の代表取締役・今泉浩治氏と弟の聡氏(右)

 水曜付夏企画「夏は自由研Q」第8弾は大阪本社の新谷尚太(47)が担当する。競走馬の飼料を専門に扱う市原商店を取材した。人間と同じく成長に欠かせない食事。季節に合わせた栄養価の高い飼料を提供し、馬づくりを支えている。

 競走馬もアスリート。日頃の鍛錬により、疲労が蓄積する。酷暑でもあり、より栄養価の高い食事が求められる。競走馬のカイバを扱っている市原商店は1967年創業の老舗。栗東トレセンから車で5分、大きな看板が見える。代表取締役を務める今泉浩治氏と弟の聡氏を中心に、従業員14人で運営。50~60厩舎とやりとりし、ほぼ毎日トレセンを訪問している。

 競走馬は1日に約10~14キロの飼料を摂取する。季節や運動強度によって異なるが水分は15~50リットル。3、4回に分けて給餌される。浩治氏は「絶対に食べてもらえる新鮮な飼料を提供することが一番。エサの配合によって肉体も変化していく。カイバがしっかり身になるように努力しています」と経営理念を語る。

 食事は大きく分けて3種類。粗飼料、濃厚飼料、補助飼料となる。これらを一頭一頭、違った配合でブレンド。主食の粗飼料は米ワシントン州が生産地でチモシー、ルーサンと呼ばれる牧草。濃厚飼料はカナダ産のエン麦が中心とされる。補助飼料は塩や砂糖、アミノ酸など。アスリートの多くが摂取するサプリメントも配合される。

 浩治氏は「馬は発汗量が多いので電解質を増やして配合します。夏場は熱中症予防を心がけ、新陳代謝が落ちる冬場は脂肪燃焼を推進させる飼料を配合。厩舎や馬によって異なりますが、季節ごとに補助飼料の配合を変え、その時季に適した体づくりを行っています」と説明する。

 19年6月、飼料を巡る事件があった。禁止薬物に指定されているテオブロミンを含んだ飼料添加物「グリーンカル」を摂取した可能性のある156頭が競走除外となった。「グリーンカル以来、業界全体がより厳しくなりました。競走馬理化学研究所で厳正な審査が行われ、それに合格したものだけが使用できます。公正競馬に向けて製品の管理を徹底し、厩舎サイドが安心して使用できるように努めています」とチーム一丸で安全を心がけている。

 同社は海外遠征にも積極的に参加。また、飼料以外に馬具も取り扱い、ペットショップや、うさぎを飼育するブリーダーにもエン麦を販売するなど多方面で事業を手がける。「最高のコンディションでレースに向かえるよう日々、追求しています。競馬界のさらなる発展のため、スタッフ全員で精進します」。多角的に厩舎をサポートし、縁の下の力持ちとなっている。

 ◇今泉 浩治(いまいずみ・こうじ)1974年(昭49)11月23日生まれ、滋賀県栗東市出身の49歳。金融機関勤務を経て父・治武氏から市原商店を受け継いだ。小倉にも営業所を構えている。

 《米で生産の牧草、年2回刈り取り》競走馬の主食となる牧草。米ワシントン州で生産されているチモシーは1シーズンで2回に分けて刈り取られる。1番刈りは6月中旬から7月上旬に採集。品種はクリア(茎が細い)、オーロラ(クリアより太い)、クライマックス(茎が太い)の3種類に分かれる。1番刈りを終えた後、再び発育したチモシーの採集が2番刈りとされている。採集時期は9月ごろで、葉っぱが多くて軟らかいのが特徴。色合いは1番刈りと比べて、より濃いグリーン。収穫量が非常に少なく、希少価値が高い。

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