鷲頭 障害挑戦から1年7カ月…ケガ乗り越えて初勝利

2025年6月18日 05:05

函館競馬場で取材に応じた鷲頭

 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社の鈴木悠貴(34)が担当する。7日の東京1Rで障害初勝利を挙げた鷲頭虎太(21)を取材。恩人2人への感謝、今後の意気込みを聞いた。

 長い道のりだった。障害初挑戦から1年7カ月。「これまで悔しい思いを何度もしてきた。結果を出せてうれしいです」。念願の初白星に鷲頭の笑みがはじけた。

 鷲頭が障害戦に乗り始めたのは、平地戦で結果を残せず悩んでいたデビュー2年目の23年。きっかけは同期で障害専門ジョッキー、小牧からのスカウトだった。「“障害をやってみたら”と言ってくれて。元々、興味は持っていたんです。それで障害練習に挑戦してみたら意外としっくりきた。それでチャレンジしようと思いました」。決断から1週間あまりで早くも初戦(11月18日、福島5R)が決定。それも小牧の尽力あってのことだったという。「(小牧)加矢太君が各所に“鷲頭が障害を始めるそうです。よろしくお願いします”と頭を下げてくれていた。騎乗のアドバイスもくれるし、助けてくれて本当にありがたかった」

 順調に経験を積み重ねる鷲頭に悲劇が訪れる。24年5月4日、新潟4R・障害戦で落馬負傷。苦しいリハビリの末、今年1月、ようやく障害戦復帰のメドが立ったが、騎乗馬集めに苦戦を強いられた。そんな時、騎乗オファーをくれたのが清水久師だった。3月1日、小倉5Rでコンビを組んだのはオープン馬エンデュミオン。結果は7着。それでも清水久師は、その後もエンデュミオンの主戦として鷲頭を起用し続けた。「勝ち切れない競馬が続いても先生は僕を使ってくれた。しかも、先生は僕のためにさまざまな競馬場でのスクーリング(競馬場での障害練習)をさせてくれた。経験を積ませてくれて、感謝しかない」。

 初勝利でコンビを組んだジオフロントも清水久師が管理し、小牧が教育してきた馬。燃えないわけがなかった。「加矢太君から馬の癖は聞いていたし、先生も調教に乗せてくれていた。これで恩返しができたけど、まだまだこれから。もっと結果を残してもっと恩返しをしていかないといけない」。人に支えられ成長した鷲頭が大きな一歩を踏み出した。

 ◇鷲頭 虎太(わしず・こた)2003年(平15)12月6日生まれ、北海道出身の21歳。22年、栗東・千田厩舎所属で騎手デビュー。同年5月7日の中京5R(ヤマニンゼスト)で初勝利を挙げた。JRA通算759戦23勝。

 ◇鈴木 悠貴(すずき・ゆうき)1991年(平3)4月17日生まれ、埼玉県出身の34歳。千葉大法経学部を卒業後、14年にスポニチ入社。23年1月から競馬担当。

特集

2025年6月18日のニュース