【チャンピオンズC】ダブルハートボンド激闘9センチ差V 坂井瑠星は史上初の3連覇
2025年12月8日 05:30 9センチ差の激戦をものにした。師走のJRAダート頂上決戦「第26回チャンピオンズC」が7日、中京競馬場で行われ、3番人気ダブルハートボンドが好位から長く脚を使って鼻差V。ウィルソンテソーロとの一騎打ちを制し、G1初制覇を飾った。牝馬Vは15年サンビスタ以来、2度目の快挙。坂井瑠星(28)は23&24年レモンポップを合わせ、レース史上初の3連覇。大久保龍志師(59)は20年チュウワウィザード以来、当レース2勝目を挙げた。
息をのんだゴール前。最後の最後にダブルハートボンドの鼻が9センチだけ前に出た。引き揚げてきた坂井は両手を上げて大きくガッツポーズ。殊勲のヒロインの首をポンポンと2度叩いた。坂井は「本当に素晴らしいのひと言。G1にたどり着くだけでも大変なのに一歩一歩ステップアップして勝つことができて本当にうれしく思います」とパートナーに賛辞を送った。
五分のスタートから道中3番手。行きたい馬を行かせ、終始リズム重視で折り合った。勝負どころの4角手前で前との距離を詰めながら直線へ。抜群の手応えで並びかけ、ゴーサインを送ると瞬時にギアチェンジ。坂の頂上で先頭に立ち、最後は内から迫るウィルソンテソーロと馬体を併せてゴールを駆け抜けた。坂井は「内外の出方を見ながら進めた。3~4角の雰囲気が良かったので、これで負けたら仕方がないと思った。ウィルソンテソーロが内から迫ってきたら、もうひと踏ん張りして最後までいい脚を使ってくれました」とねぎらった。
前走みやこSで重賞初勝利。水分をたっぷり含んだスピードを求められる不良馬場でJRAレコード決着を制した。そこから中3週で本番へ。体質が弱く、昨年8月デビューの遅咲き。幸い軽症だったとはいえ左前第3手根骨の骨折で今年の年明けまで4カ月ほど休養を強いられた時期もある。陣営は焦らず、状態を見極めながら調整を進めた。大久保師は「前走後はいつもより回復期間を長く取りました。最終追い切りを終えた翌々日に動きがガラッと変わり、これならいけると思いました」と手応えを深め、週末を迎えた。
みんなの力で勝ち切った。デビュー時から稽古をつけていた攻め専(調教騎乗がメイン)の谷口辰夫助手が現在、闘病中。大久保師は「谷口が闘病中なので引き継ぐ形でやってきました。この勝利を見て(谷口助手も)頑張ってほしい」と励ましの言葉をかける。バトンを受け、調教役を任された八木助手が担当スタッフの平子助手と二人三脚で完璧に仕上げ切った。
BCクラシック覇者フォーエバーヤング、JBCクラシックを制したミッキーファイトなどタレントぞろいの4歳世代。坂井は「古馬のダート路線は牡馬と力の差があると思うけど、それを覆してくれた」と絶賛する。大久保師は「1800メートルが一番、力を出せると思う。来年も結果を残せるよう、厩舎一丸となってやっていきたい」と気持ちを新たにした。まだキャリア8戦。伸びしろをたっぷり残した新女王がまずは英気を養い、次の戦いに備えていく。
《シルクR初制覇》09年2着シルクメビウス(当時ジャパンCダート)が最高着順だったシルクレーシングは所有馬延べ4頭目の出走でチャンピオンズC初制覇を飾った。米本昌史代表は「牡馬相手にあのレース。毎回びっくりさせてくれる馬ですが、驚きの最高潮でした。重賞を勝った時も驚かされましたけど、G1に手が届くとは。大久保先生をはじめ、スタッフの皆さまが本当に苦労を重ねてきた結果です。感動でした」と興奮気味に語った。今後は疲れを取ってからじっくり考える方針。
《ノーザンF9勝》生産者のノーザンファームは22年ジュンライトボルト以来、3年ぶり9勝目。ノーザンファーム空港の川崎洋史場長は「牧場時代から凄く期待していた馬。大久保先生が脚元に気を使いながらやってくださって、ここまで来られた。本当に凄いと思います」と関心。「500キロを超えた馬に交じって不安に思っていましたが、最後はあの子の根性、譲らない精神力が凄いと思いました」と称賛した。母パーシステントリーは今年、生まれた当歳の父インディチャンプ(牝馬)を最後に繁殖を引退。現在は子馬たちの面倒を見るリードホースを務めており、第3の馬生を歩んでいる。
ダブルハートボンド 父キズナ 母パーシステントリー(母の父スモークグラッケン)21年2月3日生まれ 牝4歳 栗東・大久保厩舎所属 馬主・シルクレーシング 生産者・北海道安平町のノーザンファーム 戦績8戦7勝 総獲得賞金2億4509万4000円 馬名の由来は2つの+愛情をつなぐ(父名、縦にハートマークが2つ並んでいるように見える額の流星より連想)


