【菊花賞】ロブチェン3冠へ!房野陽介調教助手 08年ナムラクレセントの敗戦が「自分の原点」

2026年10月22日 05:30

ダービー制覇から一夜明けたロブチェンと房野助手

 【3冠の頂へ~ロブチェン~(3)】感動的なほど美しいシーンだった。ダービーのウイニングランを終え、松山とロブチェンが大歓声の中を引き揚げてくる。出迎えた房野助手がグータッチで鞍上と喜びを分かち合い、愛馬の首に両腕を回し、力走をねぎらう。感じさせたのは強い絆だ。

 馬と人との圧倒的な信頼関係は調教を柱とする日々の生活で培われた。房野助手に春からの肉体的な変化を聞くと「別に変わりないですね」とはぐらかされたが「あ、一つだけありました。僕がロブチェンの体に見慣れたってことです」。筋骨隆々の体にも「慣れた」と笑う。馬房前でのやりとりにも、われ関せずと静かに佇(たたず)むロブチェン。大一番を前にリラックスした空気が厩舎に流れている。

 だが、3冠制覇が懸かる菊花賞に、言葉にはしないが相当な手応えを感じているのは間違いない。根拠はスタミナだ。房野助手は昨年もゲルチュタールで菊花賞に参戦。4着に入り、今年の年明けに日経新春杯を堂々と押し切ったがスタミナ面で、この先輩馬をはるかに凌駕(りょうが)するという。

 「普段の調教で乗っている中で体力がない馬はへこたれる。僕がしんどい乗り方をするので。その中でロブチェンはナンボでも走り続ける感じ。この馬の強みはスタミナ。スピードが秀でているというより、スピードをずっと持続できる。だから最後まで止まらない」

 皐月賞を1分56秒5と驚異的なコースレコードで逃げ切り、ダービーは後半1000メートル57秒7の高速ラップを差し切った馬が、他馬を超えるスタミナを備えているとしたら――。それこそ無敵ではないか?

 「ロブチェンはガツンと来た上で、そのまま走り続ける」

 気持ちの面でも、へこたれることがない。忘れがたい馬がいる。若き日に房野助手が手がけ、中央で33戦7勝を挙げたナムラクレセントだ。08年菊花賞はオウケンブルースリの3着に健闘したが、そこから重賞初制覇となる11年阪神大賞典まで2年5カ月の時間を要した。「クレセントにG1を獲らせてやれなかったことが自分の原点」。そこから一念発起し、馬との向き合い方から改め、自らの肉体面を含めて研鑽(けんさん)が始まった。

 「今はクレセントにできなかったことをやっている感じです。でも、ロブチェンとクレセントは違う。自分の敵討ちに、という気持ちはありません。ロブチェンはロブチェンですから」

 戦友と歩む、果てしなき道。3冠すら一つの道標、通過点に過ぎない。その向こうには、見たこともない素晴らしい景色が広がっている。(オサム)

 ◇房野 陽介(ふさの・ようすけ)1979年(昭54)2月12日生まれ、神戸市北区出身の47歳。広島大工学部中退後、イクタトレーニングファーム(愛知県豊田市)で4年半、経験を積み、JRA競馬学校厩務員課程を経て栗東トレセンへ。福島信晴厩舎でナムラクレセント(11年阪神大賞典V)を担当。18年2月末、師の定年引退による厩舎解散に伴って杉山晴紀厩舎へ。ケイティブレイブ(18年JBCクラシックV)、ゲルチュタール(26年日経新春杯V)などを担当。

特集

2026年10月22日のニュース