日本ハムCBO 栗山英樹氏 ディープの母の瞳に宿る達成感 長く生き道を開く 元気を保つ大切さ
2026年1月30日 11:30 侍ジャパン前監督で、野球殿堂入りした日本ハム・栗山英樹チーフ・ベースボール・オフィサー(CBO=64)による連載「自然からのたより」は、年明けに訪れた北海道苫小牧市のノーザンホースパークで対面した名牝ウインドインハーヘアについて。名馬ディープインパクトの母として知られ、馬齢35歳、人間なら100歳を超える長寿だ。長く生きることで、できることが広がって道が開けていく。そのために体を大切にと、澄んだ瞳が訴えていた。
年明けに北海道安平町の社台スタリオンステーションを訪れ、名馬たちと合った。侍ジャパンで世界一になった23年にレーティング世界一に輝いたイクイノックス、その父キタサンブラック、ディープインパクトの子キズナ…ある意味、競馬界のオールスターが今も種牡馬として活躍している。彼らの姿にはいつもオーラを感じて学ばされ、ディープインパクトのお墓参りもさせていただいた。
今年はそんな名馬たちと対面した後に立ち寄ったノーザンホースパークで、思わず足を止めさせられた馬がいた。それがウインドインハーヘアだ。言わずと知れたディープインパクトの母。91年に長嶋茂雄さんと同じ2月20日に生まれた同馬は今年で35歳になる。人間なら100歳を超える長寿だ。その澄んだ優しい瞳に吸い込まれるようで、瞳の奥に達成感のようなものを感じた。長きにわたって子供をつくり、今まで見届けてきた。「こんな表情で最後を生きたいな」と思わせるいい表情をしていた。
久しくして道となる
これは、長く継続していくことでやがて道になっていく、という意味だ。人生において大切なのは、長いか短いかではなく、その人にとっての特徴を生かして生き切れるかどうか。ウインドインハーヘアはただ長く生きているのではない。強い生命力を生かし、その血を名馬たちへつなげてきた。そのためにすべき努力も怠らない。見ていると、カイバの匂いを嗅ぎ、安全かどうか確かめるようにして、ゆっくり食べていた。便利な世の中で、この食べ物が自分に合っているか確かめなかったり、人は元気を保つ努力を忘れがちだ。「そういう努力を怠って元気でいられないと自分の特徴を生かせないよ」。そんなことを言いたげな瞳が心の奥に残った。
キタサンブラックもイクイノックスもキズナも、みんなこの名牝の子孫だ。長く生きる後に素晴らしい道が残っている。息子のディープインパクトのような派手さはない。地味だけど、彼女の生き方にはとても意味があるんだなと学んだ。新春に、いい出合いができた一日となった。
≪「ずっと元気で」瞳見つめ“対話”≫栗山氏は23年6月にもウインドインハーヘアに合っている。その日はノーザンホースパークの「ディープインパクトゲート」の公開記念セレモニーに出席。セレモニー後、厩舎の前にいた同馬と対面し、顔をのぞきこむようにして「ずっと元気でいてくださいね」と声をかけた。今年の年明けは、厩舎に入っていた同馬の瞳を見つめながら、じっくりと“対話”していた。
▽ウインドインハーヘア 1991年2月20日生まれ。アイルランドの生産で英国調教の競走馬。生涯成績は独G1アラルポカル優勝など13戦3勝。引退後に繁殖牝馬となり、99年に日本に輸入されてノーザンファームが所有した。00年から3年連続で偉大な種牡馬サンデーサイレンスと交配し01年にブラックタイド、02年にディープインパクトを出産。ひ孫のフォーエバーヤングが昨年11月に日本調教馬として初めてブリーダーズカップクラシックを制覇するなど子孫から多数のG1馬が出ている。12年に21歳で繁殖牝馬を引退し、ノーザンホースパークで功労馬として暮らしている。
▽ノーザンホースパーク 北海道苫小牧市美沢にある馬と自然に触れ合えるテーマパーク。乗馬や馬車、ハッピーポニーショーなどをはじめ、家族で楽しめる各種イベントのほかレストラン、グッズ販売店もあり、引退した競走馬たちにも合える。コンセプトは「馬と自然とひとつになる、Brilliant Moments~輝く時間(ひととき)」。希代の名馬の名を冠した「ディープインパクトゲート」もパーク内にある。
