思い出すホエール激走と“リピーターの強さ”
2020年5月15日 05:30 【競馬人生劇場・平松さとし】2012年のヴィクトリアマイル(G1)を制したのは当時4歳のホエールキャプチャ(美浦・田中清隆厩舎)だった。同馬にとってはこれが初のG1勝ち。しかし、G1戦線では常に好勝負を繰り返す馬だった。
2歳だった10年。デビュー3戦目で芙蓉Sを勝利した時の2着馬はオルフェーヴル。翌年の3冠馬だ。その約2カ月後には阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)で2着。勝ったのはこれで3戦3勝となったレーヴディソールで田中調教師は「完成度の差かな」と口にしたが、これが“惜敗のトンネル”の入り口だった。
翌年、牝馬G1戦線を歩むと桜花賞が2着でオークスと秋華賞はいずれも3着。エリザベス女王杯でも4着に惜敗。田中調教師はそれぞれ「コース取りの差」「出遅れが響いた」「枠順に泣いた」「仕掛けどころひとつだった」と語ったが、その後、改めて次のように言ったものだ。
「いずれも不運があったのは事実だけど、本当に強い馬なら少々の不利があっても勝てるはず。まだ何かが足りなかったということでしょう」
その足りない何かをついに埋めたのがヴィクトリアマイルだった。「今までで一番落ち着いていた」(田中調教師)という当日の状態を名手・横山典弘騎手がフルに生かす。好位につけると最後は追いだしを我慢するほどの余裕でついにホエールキャプチャをG1馬にしてみせたのだ。
さて、同馬は翌年の当レースでも12番人気ながら2着に好走した。さらに言うと13、14年と連覇したヴィルシーナは1→11番人気、15、16年と連覇したストレイトガールも5→7番人気と人気を落としながらも実績のある舞台で復活している。リピーターの強いデータから今年は昨年の1、2着であるノームコアやプリモシーンがアーモンドアイやラヴズオンリーユーを脅かす存在になってもおかしくはなさそうだ。
ちなみにホエールキャプチャが勝った時の1番人気馬は前年の覇者であり3冠牝馬のアパパネ。こちらは5着なのだから競馬は難しい。 (フリーライター)