【宝塚記念】サートゥル100点!立ち姿穏やか 涼しげ芭蕉布のたたずまい
2020年6月23日 05:30 沖縄の夏の風物詩といえば、芭蕉布が思い浮かびます。薄くて涼しげな風合いとサラッとした肌触り。琉球王国時代から士族の官服にも農民の野良着にも用いられてきた夏の定番服です。沖縄本島北部の大宜味村喜如嘉(きじょか)で生産されているのみですが、戦前は沖縄全土で織られていました。苧(ウー)と呼ばれる糸芭蕉の幹からとった繊維で糸をコツコツと紡ぎ、撚(よ)りをかけ、絣(かすり)を結び、染色して機織りを繰り返す。今も昔も全て手作業。二十余の工程を経て反物に仕上がるまで半年以上の月日がかかるそうです。手間を惜しまぬ根気と愛情の織物。上質の芭蕉布は布の向こう側が透けて見えるほど薄く、トンボの羽にも例えられています。まるでサートゥルナーリアの薄い皮膚のように…。
末脚の原動力となるトモの筋肉と首の付け根にうっすらと血管が浮いています。薄い皮膚を持つ馬が鍛え込まれた証です。毛ヅヤも素晴らしい。新陳代謝に優れた薄い皮膚は被毛も活性化させる。汗を速やかに拡散させて皮膚表面の湿度を抑える芭蕉布のような効果をもたらすのです。
3歳時にも薄い皮膚から血管が透けて見えましたが、今回は古馬になっての変化もうかがえます。新たに両後肢の球節に肢巻きを着けてきました。左右に装着しているのでクモズレ(後肢球節下にできる擦過傷)予防でしょう。それだけ後肢の踏み込みが強くなったと解釈できます。蹄に視線を移すと、昨秋、着けていたエクイロックス(蹄壁部の裂蹄を補強する接着装蹄)が見えません。蹄の状態が良くなったのです。
穏やかな立ち姿にも好感が持てます。昨秋は尾を上げ、耳をきつく立てながら肩に力を入れていましたが、そんな力みが取れてリラックスしている。芭蕉布を爽やかに着こなしたようなたたずまい。手間を惜しまぬ根気と愛情がたっぷり注がれた織物になぞらえたい競走馬です。