【ジャパンC】デアリングタクト今後は海外を目指す それが使命 

2020年11月27日 05:30

杉山晴調教師(撮影・亀井 直樹)

 3、4頭の候補の中に、デアリングタクトはいました。クラブの方にブラックタイプ(血統)と立ち写真を用意してもらって、選んでくださいと。その場で、すぐ選びました。まだ1歳で写真しか見ていないし、決め手は血統でしたね。エピファネイア産駒で、シーザリオの血統だから楽しみもありました。新種牡馬は基本的に面白いから好きですね。おばあちゃん(=デアリングハート、重賞3勝)も走っていましたから。

 実際に初めて見たのは1歳の9月ぐらい。牧場で昼夜放牧をやっていて、冬毛がびっしり生え、モコモコでしたね(笑い)。見た目の良さは分からなかったですけど、歩かせたら軽い感じで芝向きだなというのは分かりました。おとなしくて性格も良さそうでしたし、走る走らないは別として当たりかなと思いましたね。

 デビュー前は僕も何回か調教に乗っていましたけど、何となく馬の感じが松山君に合うかなと思いました。実際、結果も出してくれているし、合っているのかな。春先に比べたら、馬も大人になりましたね。松山君もデアリングとのコンタクトがうまくなっているのもありますが、馬自身も折り合いがつくようになっています。秋華賞なんて掛かるところもなかったですからね。

 今までで一番、強いと感じたのがオークスでした。道中もマークが厳しかったですし、直線も外に出そうとしたけど、ふたをされてもう1回進路変更。普通なら、とらえ切れていない。スムーズだったら、どれだけ強かったのか。あのイメージがあったのが、ジャパンCを選択しようと思った理由の一つ。3歳牝馬にしてみたら、秋華賞からの間隔もベスト。重量もそう。あまり、ほかの選択肢は考えていなかったですね。秋華賞までは勝たなきゃいけないと思っていましたが、今回はチャレンジャーのつもりで気は楽ですよ。思いっ切りぶつかって、どれぐらい通用するのか見てみたい。単純に、楽しみです。

 3冠馬が3頭いて、3強という表現もたまに見たりしますが、僕はアーモンドアイは絶対的な存在だと思います。引退レースで一緒に走れる機会が生まれたのは素晴らしいこと。デアリングタクトはあくまで、3歳牝馬限定のカテゴリーのチャンピオン。秋華賞もジャパンCも同じG1とはいえ、格が違うと思います。アーモンドアイとかコントレイルだけじゃなく、ジャパンCの格そのものに通用するかどうかでしょうね。

 ジャパンCで日本の一線級と遜色ない走りができれば、今後は海外も選択肢としては十分あり得るでしょう。もちろん、コロナの関係もありますが、目指さないといけないでしょうね。それが使命だと思います。海外にチャレンジして、今の日本競馬を、さらに盛り上げていきたいですね。
 =終わり=

 ◆杉山 晴紀(すぎやま・はるき)1981年(昭56)12月24日生まれ、神奈川県出身の38歳。16年調教師試験合格、同年10月開業。18年目黒記念(ウインテンダネス)でJRA重賞初制覇。同年秋のJBCクラシック(ケイティブレイブ)でG1初制覇。今年、デアリングタクトで牝馬3冠を制し、牝馬3冠最年少トレーナーとなった。今年は36勝を挙げ、リーディングトップ10をキープ。JRA通算1224戦106勝。

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