【有馬記念】馬主G1年間最多8勝の吉田代表 サンデーR激動の一年を“3本の矢”で締めくくる

2020年12月21日 05:30

競馬界について熱く語る吉田俊介・サンデーレーシング代表(撮影・西川祐介)

 さまざまな快挙、新記録が達成された2020年。サンデーレーシングはクロノジェネシス、ラッキーライラック、フィエールマン、グランアレグリア、グレナディアガーズの5頭で馬主のG1年間最多勝となる8勝を挙げた。締めくくりとなる有馬記念には、ファン投票でも上位を占めた3頭を送り込む。Vなら馬主の同レース単独最多勝となる5勝目。同クラブを率いる吉田俊介代表(46)が、グランプリへの意気込みを語り、激動の一年を振り返った。

 ――いよいよグランプリです。今年はサンデーレーシングから有力馬3頭を送り込むことになりました。
 「光栄です。3頭ともG1を複数回勝っていて、それぞれチャンスがある。しかもファン投票上位での選出。一年で最も注目されるレースですのでうれしいです」

 ――まずはファン投票1位だったクロノジェネシスですが、今年は安定した成績を残しました。
 「昨年のエリザベス女王杯(5着)が終わった時点で、厩舎とも協議し今年は牡馬相手でも中距離路線で行くと決めました。常に挑戦者の立場でしたが宝塚記念で強い勝ち方をしてくれた。思っていた以上に成長してくれた」

 ――秋初戦は天皇賞で3着でした。
 「当初は香港という選択肢もあり、年末までできるだけ間隔を空ける意味で始動戦を決めました。スタートでぶつかってプラン通りの競馬ではなかったですが、力は見せてくれたと思います」

 ――中山は初参戦。勝てば春秋GP制覇です。
 「乗り役の思うような位置で競馬できるのが強みなので、こなしてくれるでしょう。有馬は宝塚記念と親和性の高いレースという点にも期待しています」

 ――同じく牝馬のラッキーライラックも、今年はG1・2勝を挙げました。
 「2歳でG1(阪神JF)を勝って、早い時期から期待していました。ただ、同期にアーモンドアイという化け物が登場して、目立たなくなってしまった。3歳夏以降は成長の過程で心身のバランスを崩してしまい、結果を残せない時期もあった。そこから立ち直って4歳秋から今年にかけて、もう一度軌道に乗ってくれた。その点が凄くうれしかったですね」

 ――今回がラストランとなります。
 「あくまで人間が決めた線引きですが、繁殖に上がるには非常にいいタイミングになりました。いつまでも強いわけではない。大阪杯を勝ったように牡馬とも渡り合える馬。最後も期待しています。もちろんお母さんとしても。アーモンドアイの子と対決できたら楽しみですね」

 ――そしてフィエールマン。昨年は4着でした。
 「昨年はやはり凱旋門賞遠征の疲れがあったと思います。今春は目標だった天皇賞を連覇できましたが、やはり長距離戦はダメージが大きい。ゆっくり休ませて秋はオールカマーからジャパンCの予定でしたが、熱発の影響で天皇賞から有馬に目標を切り替えました。天皇賞は久々の2000メートルで追走できるか心配でしたが、いい走りで改めて強い馬だなと感じることができました。体質の弱さが改善し、5歳の今が一番充実していると思います」

 ――今年はコロナの影響で大変な一年でした。
 「我々の仕事は在宅では不可能なので、いろいろと気を使う面はありました。ただ、厳しい状況の中、中央競馬は1週も休むことなく開催を続けることができた。当たり前に仕事ができることのありがたみも実感できた。JRAを含め、携わった全ての人々に感謝したいです」

 ――ジャパンCも盛り上がりました。
 「凄いレースでしたね。組もうと思っても組めないマッチアップ。アーモンドアイは強かったですが、コントレイルもデアリングタクトもさすがでした。クラシックでは2頭をどうしたら負かせるかといろいろ考えましたが、全く歯が立ちませんでしたから。生産者としては新たなやりがいができました」

 ――それでもサンデーレーシングとしては年間G1・7勝。馬主としての最多勝記録を更新しました。
 「グランアレグリアも頑張ってくれましたが、同じ時期に4頭もG1ホースがいるのは、普通ならあり得ないこと(※取材後にグレナディアガーズが朝日杯FSを制し5頭で8勝に)。大変な年でしたが、そういう意味では幸せな一年だったと思います」

 ――そのうちの3頭で臨む今年最後の大一番です。
 「1頭に肩入れすることはありませんが、3頭ともいい状態でレースに向かえそうです。有馬記念は常々勝ちたいと思っているレース。コロナで娯楽が制限される中、手軽に楽しめるコンテンツとして、新たに競馬を始めた方も多いと聞きます。いいレースをして、より競馬に興味を持ってもらえたらと思っています」

 ≪同レース馬主単独最多5勝目へ≫サンデーレーシングは09年ドリームジャーニー、11、13年オルフェーヴル、14年ジェンティルドンナで有馬記念4勝。これはシンボリ牧場(84、85年シンボリルドルフ、02、03年シンボリクリスエス)と並ぶ馬主のレース最多勝記録。今回Vなら単独最多の5勝目となる。また、同一馬主でワンツー独占なら09年ドリームジャーニー→ブエナビスタ以来2度目の快挙となる。

 ◇吉田 俊介(よしだ・しゅんすけ)1974年(昭49)4月13日生まれ、北海道出身の46歳。慶大卒。98年ノーザンファーム入社。同ファーム空港牧場場長を経て、現在は同ファーム副代表。サンデーレーシングの代表取締役も兼務する。父はノーザンファーム代表の吉田勝己氏。趣味はサッカー観戦。

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