国枝師 アカイトリノムスメで母娘制覇の偉業へ
2021年10月15日 05:30 【競馬人生劇場・平松さとし】2010年の牝馬クラシック戦線。桜花賞を制したアパパネ(美浦・国枝栄厩舎)はオークスでサンテミリオンと1着同着。秋には秋華賞に出走し、牝馬3冠コンプリートを目指した。
「金子真人オーナーの希望もあって、夏の間もずっと厩舎で管理していました」
国枝師がそう語ったように、放牧には出なかった。そんな春の牝馬2冠馬は、秋初戦のローズSがオークスからプラス24キロの494キロ。太め残りでもあったか4着に敗れた。
それでも秋華賞前には国枝師は「桜花賞前のチューリップ賞でも負けていた(2着)ように叩かれて良くなるタイプ。今回も上昇気配を感じられます」と強気に語った。
迎えた秋華賞の体重は490キロ。ローズSから4キロしか絞れなかったが、これには騎乗した蛯名正義騎手(当時、現調教師)がレース直後、次のように語った。
「見た目は数字以上に絞れている感じで、全く太くは思いませんでした」
プロとしてのその感性に誤りがないことを証明してくれたのはアパパネだ。最後の直線で前哨戦とは違う伸びを見せ、見事に3冠馬になってみせたのだ。
思えば国枝師と金子オーナー(名義は金子真人ホールディングス)は昔から好相性。厩舎初のG1馬としてG1を2勝したブラックホークも同オーナーだったし、アパパネの前にはピンクカメオによるNHKマイルC(07年)制覇もあった。
「ピンクカメオは桜花賞で負けた後、オークスへ行こうと考えていたらオーナーから“NHKマイルCへ行きましょう”と言われました。結果、勝てたのだから金子オーナーさまさまです」
国枝師は今でもそう言って当時を振り返りながら笑みを見せる。
そんな国枝師が厩舎通算20回目となるJRA・G1制覇へ向け、今週末の秋華賞に金子オーナーの馬で、アパパネの娘のアカイトリノムスメを出走させる。母娘制覇の偉業に立ちはだかるのは同じ金子オーナーのソダシになるかもしれない。注目しよう。 (フリーライター)