ドバイ遠征空振りの不利覆したアーモンドアイ
2022年5月13日 05:30 【競馬人生劇場・平松さとし】
2020年3月22日の夜、私は国枝栄調教師と共に成田空港にいた。
週末に行われる予定だったドバイワールドカップデーへ向け、出国審査も終わり、まさに日本をたとうとしていた時、一本の電話が入り、次のように告げた。
“ドバイワールドカップデーは1年延期”
主催者の公式な発表はこの通りだが、実質的にはこの年の開催の中止を意味していた。世界中で猛威を振るい始めたパンデミックが、ついに競馬界も直撃し始めたと思える瞬間だった。
私たちは搭乗口まで行き、乗る予定だった飛行機を目の前に見ながらキャンセル。前代未聞の事態にパスポート審査や再入国手続きなどゴタゴタと時間を要したものの、そのままUターンをして帰路に就くことができた。
問題は既に中東入りしていた馬たちである。走るはずだった予定のレースがなくなり、手ぶらで帰らざるを得なくなった。無駄に日本とドバイを往復する形に、影響を受けた馬は多く、カレンブーケドールもそんな一頭。国枝師は「ダメージが大きかった」と唇をかんで語った。
しかし、同じ国枝師の管理馬でもアーモンドアイは大きな影響を受けなかったという。
「帰国直後からすぐにカイ食いも戻り、元気いっぱいでした」
そう語った指揮官は、5月17日に行われたヴィクトリアマイル(G1)を新たなマイルストーンとして仕上げ直した。結果は皆さんご存じの通り。空振りに終わったドバイ遠征の不利をモノともせず、2着を4馬身突き放して快勝。伯楽にとっては11年アパパネ以来となる同レース2勝目となった。
前年暮れには予定していた香港遠征を熱発で回避し、有馬記念(G1)に目標を変えたところ9着とよもやの敗戦を喫した。しかし、それ以来の競馬となったこの一戦で絶対女王は復活してみせたのだった。
今年は昨年3着のマジックキャッスルを再挑戦させる国枝師。デアリングタクトやレイパパレ、ソダシなどG1馬を相手にどこまでやれるのか。注目したい。(フリーライター)