【日本ダービー】NF天栄・木実谷場長 皐月賞1、2着馬は充実の調整基地で心身ともリラックスを明かす

2022年5月26日 05:30

ダービーへの思いを語る木実谷場長

 キーパーソンが登場だ。ノーザンファーム天栄の木実谷(きみや)雄太場長(41)がダービーへの意気込みを語った。皐月賞1、2着のジオグリフ、イクイノックスが放牧期間を過ごす重要な基地。2頭への、そして大一番への思いを語った。

 眼前に迫る緑。心落ち着く風景の中にピリッとした空気を感じる。16、17年のダービー馬マカヒキ、レイデオロも多くの時間を過ごしたノーザンファーム天栄。勾配のきつい坂路、ゆったりと負荷をかけられる周回コース。美浦や栗東と遜色のない施設が備わる。

 訪れた19日も秋の反撃を誓うエフフォーリアが穏やかな空気の中で汗を流していた。この一大拠点を統括するのが木実谷場長だ。すっかり定着した短期放牧について「トレセンだと2000頭近くの馬がいます。満員電車みたいに馬が窮屈な思いをすることもある。(天栄なら)精神的にゆとりを持ちながら調整ができますから」と利点を口にした。

 皐月賞でワンツーを決めたジオグリフ、イクイノックスも“天栄組”だ。この中間も一度、天栄での放牧を挟み、同場長は2頭の状態を確認した。「イクイノックスは体が戻って走るフォームが良くなりました。まだ成長途上の分、短期間での大きな変化はありませんが順調に調整できていることが何よりです。ジオグリフの方は今回、こちらの想像を上回る良化具合ですね。季節的なものもあるのか、気温の上昇とともにぐんぐんと状態面が良化し、皐月賞前とは全然違います。凄く良くなっている」と2頭の近況を明かした。

 アーモンドアイ、グランアレグリアなど希代の名馬たちもここで多くの時間を過ごした。“天栄仕上げは走る”と言われ、充実一途のように見えるが、同場長の言葉には危機感がにじんだ。「(ノーザンファームは)今年、現時点で昨年同時期の半分くらいしか重賞を勝てていません。勝負の世界。追いかけられる立場としては常に何かを変えていかなければいけないということをここ最近は強く感じています」。その点で皐月賞を中147日で挑んだイクイノックスは新たな挑戦だった。過去の例にならって前哨戦を使うのは楽な選択だったが、思い切って馬体の成長を待ち続けた。「何事もチャレンジです。幸いにも我々には多くの馬を扱ったノウハウがありますので、それを生かしてクラシックへの道順を増やしていければと思います」

 同場長は皐月賞の舞台裏も明かした。「レース翌日は、大喜びしているスタッフがいる一方で、落ち込んでいるスタッフもいたので、勝ってうれしい気持ちと負けて悔しい気持ちが両方ありました。この中間、ジオグリフはまた勝てるように、イクイノックスは逆転できるように、それぞれのスタッフが頑張って仕上げてきましたので、2頭ともいい結果に結びついてほしいです」。にじむのは納得のいく状態で2頭を美浦に返せた充実感。クラシックで連続のワンツー決着へ、期待は膨らむ。

 ◇木実谷 雄太(きみや・ゆうた)1980年(昭55)8月5日生まれ、東京都出身の41歳。東京農工大では馬術部に所属。卒業後、ノーザンファーム入社。ノーザンファーム空港牧場、山元トレセン勤務を経て、現在はノーザンファーム天栄場長として牧場と主に美浦トレセンの厩舎のパイプ役を担う。

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