【阪神JF】武藤家のモリアーナ!善則師G1初制覇へ手応え「ここまで勝てるイメージの馬いない」

2022年12月7日 05:30

武藤師(左)と話す武藤雅騎手(撮影・郡司 修)

 秋のG1企画「時の人」。阪神JFに出走するモリアーナは武藤家の夢が詰まった1頭。長女の歌手・彩未(26)が名付け、父・善則師(55)が管理し、長男・雅(24)が騎乗する。雅は重賞&G1初制覇、善則師もG1初制覇がかかる。善則師が手応えを語った。

 ――モリアーナの名付け親は彩未さんだとか。
 「オーナー(高橋文男氏)の馬はどれも調教師がネーミングするんです。悩んでいた時に娘に相談したら、この名前を言ってくれて決まりました。“スラブの伝承に登場する風の女神”のことだそうです。神話好きの知人から存在を知り、競走馬にぴったりだと思っていたら、それにぴったりの馬がいた。運命だ…と」

 ――20年の当歳セレクトセールで3300万円(税込み)。
 「1500万円からスタートしてその値段で落とせました。お値打ちでしたね。母系にオーナーが以前クラブで持っていた馬が入っていたので購入しました。とても生命力のある馬。育成時に顎に骨肉腫ができて、競走馬になれるかどうかという時期が何カ月も続いたんです。馴致(じゅんち)の時に顎に引っかかってハミが掛けられないほどでした。しばらくしたらそれが固まって。そこをクリアしてからは、育成の方が“もう絶対(走ります)”って言ってくれるくらい順調に来た。6月の東京でデビューしていきなり勝てましたから。その後もイメージ通りに来て、いつも元気。まだ腫れは残っていますけど、何の苦労も掛けない馬です」

 ――新馬戦に続きコスモス賞も勝って2連勝。
 「前走は少頭数で外枠。先を見据えて取りこぼせない一戦。不利を受けたくなかったので正攻法でいったのでしょう。2番手で折り合いはついていたようだけど、スピードの違いで4角で早めに先頭に立ってしまった。尻尾を振って遊んでいても、歯を食いしばって頑張っていた。本来は新馬戦みたいに好位から抜け出す競馬が理想。勝負根性のある馬で、前に馬がいると抜こうとしますから」

 ――1日の1週前追いは雅騎手が騎乗。坂路併せ馬で4F53秒9~1F12秒1。
 「気持ちいいくらい最後伸びるね。ピタリと折り合いもついていい反応だった。雅にとって手放せない相棒になってほしい。一緒に(G1を)獲れたら」

 ――セールスポイント。
 「トモ(後肢)のキック力。札幌の重い馬場もこなしたし、直線に坂のある阪神に替わるのはいい。タフさを要求される馬場の方が合うはずだから。少し繊細だけど引きずらないのもいい。何かあってもすぐに収まるから。そこはずっと持っていてほしいね」

 ――武藤家の夢が詰まっている。
 「調教師を20年やってG1に何度も出したけど、ここまで勝てるイメージが湧く馬はいなかった。今回は胸を張って出せます」

 ◇武藤 善則(むとう・よしのり)1967年3月21日生まれ、神奈川県出身の55歳。1986年美浦・黒坂厩舎所属で騎手デビュー。同期は柴田善臣。2001年に騎手を引退。通算2865戦154勝(うち重賞1勝)。01年に調教師免許を取得し03年厩舎開業。08年セラフィックロンプで愛知杯を勝ち重賞初制覇。通算5206戦325勝(うち重賞3勝)。長女・彩未は歌手、長男・雅は美浦・水野厩舎所属の騎手。

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