【追憶の阪神JF】雷雨切り裂いた05年テイエムプリキュア 3着馬はあの名牝の母になった
2022年12月7日 07:00 05年の阪神ジュベナイルフィリーズは雨だった。出走馬がパドック周回中に降りだし、勢いを弱めることなくターフを濡らし続ける。各馬が4コーナーに差しかかった時、阪神競馬場に稲妻が走り、雷鳴がとどろいた。
発表は良馬場だが、とても良とはいえず、経験の浅い2歳牝馬には厳しいコンディション。追っつけ気味に追走する馬も多い。熊沢重文騎乗のテイエムプリキュアもその1頭。
「かかっていく馬じゃないので、道中は悪いなりの手応え。出たなりのポジションを4コーナーまでキープしようという乗り方でした」
熊沢がレース後に振り返った。中団の位置取りで、周囲の入れ替わりが激しかったが、置かれないように追走。それほど手応えはよく見えなかったが、4コーナーから押し上げていくと直線入り口で前が開いた。
「直線は必死に追ってました。従順で、並ぶと一生懸命に相手を負かそうとしてくれる」
熊沢はテイエムプリキュアの勝負根性を承知していた。「だから、並んだら負けない、という気持ちがありました。前走(かえで賞1着)で乗った感じから、スパッと切れるタイプでないのは分かっていた。雨もマイナスにはならないと思っていました」と天候も味方につけた。決していい手応えには見えずともバテずに、勝負根性を存分に発揮して抜け出す。2着シークレットコードに1馬身半つける内容は完勝と言っていい。1分37秒3と良馬場マイルとは思えない消耗戦を根性で制した。熊沢にとっては91年ダイユウサク(有馬記念)以来のG1タイトル。
「うれしいです。ずいぶん時間がたってしまったね。G1を勝つ感覚を忘れかけていました」と笑った。
テイエムプリキュアは03年北海道オータムセールにおいて税抜き250万円で取り引きされた。竹園正継オーナーは「今まで買った馬のなかでは最も安かった。G1を勝っていちばんうれしかったね」と相好を崩した。馬名はテレビアニメ「ふたりはプリキュア」からで、オーナーの愛娘が命名した。
このレースの3着がフサイチパンドラで、翌年エリザベス女王杯でG1制覇。繁殖入りしたのちにアーモンドアイを送り出した。