【秋華賞】山住勲氏 接戦になって声が出るかも“シランケド” 紫苑S3着で大外から伸びて権利ゲット

2023年10月11日 05:30

インタビューに応じるシランケドの馬主・ニッシンホールディングスの代表取締役・山住勲氏(撮影・坂田 高浩)

 JRA秋のG1シリーズが再開。今週は3歳牝馬3冠最終戦「第28回秋華賞」だ。出走関係者に迫る企画「時の人」はシランケドを所有するニッシンホールディングス代表取締役・山住勲氏(60)にインタビュー。ユニークな馬名の由来や、春にニュージーランドTを制したエエヤンを含む3歳世代の活躍の裏側、20年に開業した育成牧場チャンピオンヒルズ(滋賀県大津市)についても語った。 

 ――シランケドが紫苑S3着で秋華賞の優先出走権を獲得しました。現3歳馬世代はエエヤンも含めて活躍しています。
 「僕がセリで馬を買う時は調教師の方と選ぶのではなくて、僕と中村明人(チャンピオンズファーム代表取締役)や他のメンバーで別々に馬を見るんです。この馬が欲しいなっていうのを今までは意見を擦り合わせていたんですが、どうしても最大公約数になってしまって。脚が曲がっていたりとか、欠点がある馬を省く形になっていたんですが、この年からもうみんなで決めずに自分の好きな馬を買おうと。それが良かったのかもしれないですね。今は欠点よりもいいところを見ています。エエヤンは血統よりも馬体にホレたんですよ」

 ――馬名がユニークで、とても印象的です。
 「エエヤンは以前から考えていた名前だったんです。一番、馬体が良かったのでエエヤン。関西弁シリーズはこの馬から始まったと思います。シランケドは中村が欲しがって買いまして、それを僕が引き受けることになったので、シランケドってつけたんです。知らんけど、って僕ら関西人にとっていい言葉なんです。自分の言葉に責任を持てないけど、話を大きくする時に使ったりしますよね」

 ――所有馬は他にも、なじみやすい名前が多いですね。
 「例えばコラエテーナで言うと、買った後に喉に問題があることが分かりまして、喉鳴りせずにこらえてーな、っていう願いですね。一昨年の北海道セレクションセールで父ハービンジャーの牝馬を2頭買ったんですが、体が大きい方をベッピンサン、小さい方をカイラシ(関西の方言で、かわいい)にしました。たくさん馬がいる中で、分かりやすくプラス思考で名前をつけようと」

 ――シランケドは1勝馬ですが中京の未勝利戦がインパクトのある勝ちっぷりでした。
 「出遅れてテレビ画面に映っていないところから伸びてきて。せめて5着以内と思っていたので、ビックリしましたね。小倉の1勝クラスで負けましたけど、牧浦先生にお願いして紫苑Sに出してもらいました」

 ――エエヤンのNHKマイルCも含めて、所有馬がG1に出走し、注目度が高まっています。馬主になられたきっかけを教えてください。
 「両親(父・知平さん、母・れい子さん)の影響が大きいです。馬主をやめようかなっていう時期もあったんですけど、中村明人の夢をかなえたくて。両親が馬を預けていた厩舎なんですけど中村好夫先生の息子で小学生時代からの友人なんです。彼がチャンピオンズファームという牧場をやっていて、その応援から入りました。20年ぐらい前から購入頭数も増えてきて、チャンピオンヒルズの施設もニッシンホールディングスが所有しています。ただ、あくまでも応援でチャンピオンズファームとは別法人なので、何の権利もないですけどね」

 ――20年10月に滋賀県大津市に開場したチャンピオンヒルズは放牧先としてシランケドも利用しています。
 「効果は大きいと思います。長期休養明けでチャンピオンヒルズの馬を買っておけば結構、当たるって言われるぐらい。今は全体で勝率が12%ぐらいあって毎週、重賞を勝っています。坂路が直線なのにも、こだわりがあります。それぞれの厩舎長で、どの調教師の方の馬を預かるか、というのがありますね。ハード面もそうですけど、働いてくれる厩舎長を含めてスタッフがいいんです」

 ――外厩施設として存在感を示しています。
 「オープンして、すぐに馬房の稼働率が100%になり、自分が持っている馬も入れられていないです。新たに馬房を増やしているところで、現在の450馬房から新たに48馬房と16馬房を増やして、11月に完成予定ですね」

 ――最後に秋華賞に向けて意気込みをお願いします。 
 「エエヤンで重賞を勝てた時は思っていた以上に周りの反響がありました。そこまで緊張はしないと思いますが、直線で接戦になった時は声が出るかもしれません。エエヤンのニュージーランドTもミルコ!ミルコ!って声が出ましたしね(笑い)」

 《勝負服は「ジャマイカ」》ニッシンホールディングス名義の所有馬は先月9日にゴキゲンサン(牝3=伊藤大)が中山ダート1200メートルで1勝クラスV、今月1日は中山芝1800メートルで同厩舎スティックバイミー(牝2)が新馬勝ち。ジャマイカ国旗をモチーフにした緑、黄十字襷(たすき)、黒袖の勝負服が躍動した。山住氏は「ジャマイカによく行くんですよ」と柄に選んだ理由を説明。ユニークな馬名に加え、陸上短距離で100&200メートルの世界記録を持つウサイン・ボルトの出身国をイメージした勝負服が合わさり、ファンに強烈なインパクトを与えている。

 ▽チャンピオンヒルズ 20年10月19日に琵琶湖の西側、滋賀県大津市伊香立下在地町に開場した育成牧場。栗東トレセンから車で約40分の距離に位置する。総面積71ヘクタールで甲子園球場18個分の広大な敷地。カーブで脚を滑らせるリスクがない直線1000メートルの坂路がウッドチップとフェルトダート(クッションが利いて脚元に優しい)の2本、平地は1000メートルのフェルトダートと1100メートルのダートコースを備えている。この秋、ソウルラッシュ(京成杯AH)、ハギノアレグリアス(シリウスS)、アーテルアストレア(レディスプレリュード)、エルトンバローズ(毎日王冠)が重賞制覇。パンサラッサやテーオーケインズ、バスラットレオン、セリフォス、ナムラクレア、ペリエールなどもここで調整している。6日に引退が発表された20年3冠牝馬デアリングタクトも以前、入厩していた。

 ▽知らんけど シランケドの馬名の由来である「知らんけど」は昨年末の「現代用語の基礎知識選 2022ユーキャン新語・流行語大賞」でトップ10入りした。「文末に付けて、断定を避け、責任も回避する言い方」で若者中心に話題となった。関西弁ながら全国的に使用する人が増え、受賞者は「知らんけど」を使用している人全員。

 ◇山住 勲(やまずみ・いさお)1962年(昭37)12月21日生まれ、大阪府出身の60歳。チャンピオンヒルズの施設を所有しているニッシンホールディングスの代表取締役。日伸工業株式会社代表取締役、医療法人育和会のCEOなどを務める。伯父に日本プロ野球史上唯一、通算400勝投手の金田正一氏がいる。主な所有馬は今年のニュージーランドTで重賞初タイトルをもたらしたエエヤン。

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