“栗東留学”か美浦新坂路か 小島流更なる進化へ模索中

2023年10月11日 10:30

栗東に滞在し調整するキタウイングと小島師

 日々トレセンや競馬場など現場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は栗東取材班の坂田高浩(38)が担当する。08年秋華賞(ブラックエンブレム)や09年エリザベス女王杯(クィーンスプマンテ)など関東馬の栗東滞在で結果を残してきた小島茂之師(55)に注目。今週キタウイングを起用する秋華賞への意気込み、栗東の調教施設や美浦の新坂路について取材した。

 栗東滞在中のキタウイングに日々、稽古をつける姿は実に若々しい。55歳だとは思えない。「乗っている人はみんなそうだよ」と笑う小島師は1週前追いでも手綱を取り「馬場コンディションによって美浦でも栗東でも、その時々で時計の出方が違う」。試行錯誤しながら、勝負の秋を迎えて調整を続けている。

 同厩舎は秋華賞にこれまで栗東滞在で4頭が出走。2頭出しの08年はブラックエンブレムが11番人気1着、プロヴィナージュが16番人気3着と3連単は当時のG1最高配当となる1098万2020円だった。「それで終わっちゃダメですよね」と12年ラスヴェンチュラス(10着)以来の同レース参戦に意欲を燃やしている。滞在経験があるスタッフも多く、キタウイング自身が栗東は昨年の阪神JF、今春のチューリップ賞→桜花賞に続く3度目で、すっかりなじんでいる。新潟2歳S1着で賞金を加算した時点で「(過去2回は)完全にここを見据えて」と勝負レースに指定。夏の前走・クイーンS8着後は中10週のここに狙いを絞ってきた。「以前よりしっかりしてきた」ことで、中間は坂路2本のメニューを取り入れ「今のところ、いい方向に向いている」と手応えを得ている。

 今夏は美浦の坂路工事の影響もあり、関東馬の滞在頭数はこれまで以上だった。栗東坂路はもちろん、逍遥馬道でのアップダウンの効果を感じる厩舎スタッフの声が多く、指揮官も「虫が少ない気がする。日陰で夏は涼しい気もするしね」と同調した。「前や後ろに馬がいた方が緊張感があり、走りも変わってくる。そのあたりは他の厩舎にもお願いしたりして」と工夫を重ねている。

 ただ、美浦坂路がリニューアルされたことで厩舎方針が変わるかもしれない。高低差が栗東より1メートル大きくなり「先週は4F52秒を切るぐらいが1番時計。残り1Fも12秒を切れていない。だからどうだって答えも出ていないけどね」と手探りを続け、「(栗東調教馬との)差は詰まらないとおかしい。来年以降、滞在するかどうかはまた考えないとね」としている。経験値によるノウハウがありながらも状況を見極め、最善を求めて柔軟に調教を積み重ねていく。

 ◇小島 茂之(こじま・しげゆき)1968年(昭43)2月15日生まれ、東京都出身の55歳。93年7月に美浦・嶋田功厩舎の厩務員になり、浅野洋厩舎、岩城厩舎で調教助手を務め、02年に調教師免許を取得。翌年、厩舎を開業した。JRA通算4612戦342勝、うち重賞11勝。

 ◇坂田 高浩(さかた・たかひろ)1984年(昭59)11月5日生まれ、三重県出身の38歳。07年入社で09年4月~16年3月まで中央競馬担当。その後6年半、写真映像部で経験を積み、昨年10月から再び競馬担当に。

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