前川恭子さん JRA史上初女性調教師誕生!厩舎づくりへ「働きやすいを大切に」
2023年12月8日 05:30 史上初、という枕ことばも相まって責任感がにじむ。前川さんは調教師試験合格の記者会見ではこわばった表情で、厩舎づくりへの思いを口にした。「働きやすさを大切にしていきたいです」。会見後にフォトセッションや囲み取材が始まると次第に緊張がほどけ「スタッフみんなで知恵を出し合って頑張っていきたい」と意気込んだ。
千葉県富里市生まれ。実家近くに牧場が多く「馬を見ない日がなかった」という環境から馬に親しみを持ち始めた。筑波大学在学時に馬術部を通して競馬サークルの仕事を知り、栗東トレセンでは03年から崎山厩舎で働き始めた。
とりわけ思い出に残っている馬は08年京阪杯を制したウエスタンダンサーだ。同年に長女の産休明けから復帰して以降、引退するまで携わった。「歩様が悪かった馬で、今だったらもっとやれたんじゃないかって」。試行錯誤の日々で学びも多かった。並行しての子育ても「夜泣きが凄かったです」と苦笑いしながら「母も協力してくれたので助かりました。先生も理解してくれて(2頭を世話する)持ち乗りだったので、1頭目と2頭目の間に帰らせてもらったり」と感謝を忘れず、目指すべき調教師像を描いた。
夫は友道厩舎で昨年のダービー馬ドウデュースなどを担当する前川和也助手。合格後には「おめでとう、頑張れよ、って言われました。(高校1年生の)娘には何も言われなかったですけど」と笑みを浮かべた。多くの人の支えで、5回目(2次試験は2回目)の受験で目標を達成した。
「もっと女性の方に入ってきてほしいので、そういう意味でアピールできたら」と口元を引き締めた。JRA女性調教師の先駆けとして、使命感を持って道を切り開く。
【国内では9人目】国内での女性調教師は地方・ばんえいを合わせると浦和競馬の平山真希師や高知の宮川真衣師など史上9人目(現役8人目)。海外では凱旋門賞馬トレヴを管理したクリスチャン・ヘッドマーレック師(引退)、オーストラリアで殿堂入りしているゲイ・ウォーターハウス師、今年のベルモントS(アルカンジェロ)で女性調教師として初めて米クラシック3冠レースを制したジェナ・アントヌッチ師らがいる。
▼宮川真衣師(高知競馬の女性調教師) 面識はないですが、相当な努力をされたと思いますし、覚悟も凄かったと思います。おめでとうございます。私も高知競馬では初めての女性調教師ですが、周りの方に助けられながら、とてもやりがいを感じています。オーナーや厩務員さんたち、そして厩舎の馬とたくさんの人たちの思いがあって1勝の重みが騎手時代とはまた違います。G1の舞台に女性調教師が立つ姿を見たいですね。
◇前川 恭子(まえかわ・きょうこ)1977年(昭52)4月9日生まれ、千葉県出身の46歳。03年JRA競馬学校入学。03年から栗東・崎山博樹厩舎で厩務員を経て調教助手。18年の解散後は田所秀孝厩舎を経て、19年から坂口智康厩舎へ。
≪栗東トレセンでは秋山真ら6人突破≫栗東トレセンでは前川助手含め6人が合格。秋山真は2月末まで騎手の仕事を全うする構えだ。秋山真は「師匠の野村先生や、父が所属していた小林稔先生を目指していきたい」と目標を語った。高橋一哉助手(37=鈴木孝)は1次試験9回、2次試験4回目での吉報。佐藤悠太助手(35=寺島)は1次7回目、2次3回目で合格。宮地貴稔助手(43=笹田)は1次7回目、2次5回目で夢をかなえた。東田明士助手(35=緒方)は父が元ジョッキーで騎手引退後は長らく音無厩舎で調教助手を務めた幸男さん。1次5回目、2次3回目での合格だった。
◇秋山 真一郎(あきやま・しんいちろう)1979年(昭54)2月9日生まれ、滋賀県出身の44歳。父・忠一さんは元騎手で元調教助手。97年、栗東・野村彰彦厩舎所属でデビューし、現在はフリー。12年NHKマイルC(カレンブラックヒル)でG1初制覇、18年福島牝馬S(キンショーユキヒメ)で史上5人目(当時)のJRA全10場重賞制覇を達成。JRA通算1万3480戦1056勝、うち重賞38勝(G12勝)。1メートル67、50キロ。血液型A。
◇高橋 一哉(たかはし・かずや)1986年(昭61)3月4日生まれ、新潟県出身の37歳。10年JRA競馬学校入学。12年から栗東・村山明厩舎で調教助手。18年から鈴木孝志厩舎へ。
◇東田 明士(ひがしだ・あきし)1988年(昭63)9月27日生まれ、滋賀県出身の35歳。13年JRA競馬学校入学。15年から栗東・池添兼厩舎、23年から緒方厩舎。思い出の馬にヤマカツエース(16、17年金鯱賞など重賞5勝)。
◇宮地 貴稔(みやじ・たかとし)1980年(昭55)10月15日生まれ、大阪府出身の43歳。04年JRA競馬学校入学。05年から栗東・武邦彦厩舎で厩務員、調教助手。09年から笹田厩舎。過去の担当馬にエアスピネル(17年京都金杯など重賞3勝)。
◇佐藤 悠太(さとう・ゆうた)1988年(昭63)5月3日生まれ、山形県出身の35歳。12年JRA競馬学校入学。13年から栗東・田中章博厩舎で調教助手。16年から寺島良厩舎。父は元上山競馬の調教師で、現在金沢競馬で調教師を務める佐藤茂師。