安田隆師ラストラン香港国際レース ダノンザキッドで有終Vへ

2023年12月8日 05:08

 【競馬人生劇場・平松さとし】数々の日本の名馬がはね返され続ける凱旋門賞(G1)。これを勝つのは至難の業と言う人もいるが、かつてそれ以上に高く厚い壁が立ちはだかると思われていたのが香港スプリント(G1)だ。

 エルコンドルパサーやナカヤマフェスタ、オルフェーヴルなどが凱旋門賞で2着に好走したが、その間、香港スプリントに挑んだ日本馬は惨敗を繰り返した。それもスプリンターズS(G1)や高松宮記念(G1)の覇者が挑みながら、そのほとんどが2桁着順に沈み続けたのだ。

 そんな歴史に終止符を打った馬がいた。12、13年と同レースを連覇したロードカナロアだ。管理したのは安田隆行調教師。

 「1年前にも来ていたせいか、2年目は少しおとなし過ぎた感じがありました。そこで最終追い切りの際、予定より強めにやったことで、気合が乗りました」

 見事に連覇を果たせたのには、そんな微妙なさじ加減があったことを、当時、指揮官が教えてくれた。

 さて、ロードカナロアがターフを去った後は、再び沈黙を続けた日本のスプリンター勢だが、20年にはダノンスマッシュが香港スプリントを優勝。同馬の父はロードカナロアで、管理したのはまたも安田隆師だった。

 「ロードカナロアの現役最後の一戦が香港スプリントで、それを勝った際、“将来、この馬の子供でまた勝ちたいです”と話したのですが、それが実現できて本当にうれしかったです」

 当時、そう言ってみせた笑みが忘れられない。

 さて、そんな伯楽は、今週末に行われる香港国際競走に、またも管理馬を送り込んでいる。挑戦するのはスプリント戦ではなく、1600メートルの香港マイル(G1)。馬は3年前のホープフルS(G1)の覇者ダノンザキッドだ。すでに現在70歳で、来年の2月には残念ながら引退が控えている安田隆師にとって、香港国際レースは正真正銘、これがラストラン。良い思い出がたくさんあるであろうかの地での締めくくりが最高の形になるか、はたまた他の日本馬がそれに立ちはだかるのか。応援しつつ、注目したい。 (フリーライター)

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