【朝日杯FS】セットアップ 逃げるはハマれば役に立つ!ジンクスを超えてゆけ

2023年12月13日 05:30

セットアップ

 競馬ファンの心をわしづかみする逃走劇を――。前線記者が推したい馬の魅力をアピールするG1ウイークの水曜企画「馬(バ)チェラー」。2歳G1第2弾「第75回朝日杯FS」(17日、阪神)は東京本社・鈴木悠貴(32)が単騎逃げ候補セットアップに熱視線。2歳戦における逃げ馬の優位性も分析し「役に立つ」のはこの馬との結論だ。 

 「逃げるは恥だが役に立つ」。16年にヒットした新垣結衣・星野源主演のラブコメディードラマだ。由来は「自分の戦う場所を選べ」という意味のハンガリーのことわざだ。

 競馬において「逃げ」は恥ではない。が、他馬にマークされて自分のリズムを崩すと大敗もある「危うい」戦法でもある。その分、ハマった時の妙味は絶大。「逃げは危ういが馬券の役に立つ」。朝日杯FSでの逃げ最有力は…。未勝利、札幌2歳Sと逃げ切って連勝したセットアップだ。

 2歳戦と言えば逃げ馬。今年、先週までに行われた2歳戦で逃げた馬の勝率は22・4%。他の戦法を取った馬より抜けて高い数字を誇る。しかも単勝回収率は199%。人気薄の激走も多い。キャリアの浅い若駒同士の戦い。折り合いを欠いたり、馬群でひるむ馬もいる。他馬に邪魔されることなく、力を出し切れる点が好走の要因とも言える。

 鞍上・横山武も、実は隠れた逃げの名手。今年の逃げ馬での勝率は26・2%。こちらも他の戦法を上回る。父・典弘はセイウンスカイ(98年菊花賞)、イングランディーレ(04年天皇賞・春)など、大舞台で華麗な逃げ切りを決めてきた。父譲りの絶妙なペース感覚が備わっている。

 デビュー3戦全てで逃げているセットアップ。前進気勢の強さが長所である一方、その気性から制御の利きにくさも併せ持つ。だが、調教を重ねるごとにその弱点が徐々に解消。1週前追いでは、3頭併せの真ん中で我慢。直線で横山武に促されると、その合図にきっちり反応できた。

 札幌2歳S以来、久々に手綱を取った鞍上は「北海道の時よりもパワーが上がりました。折り合いは少し苦労したけど、成長が見られた」と好感触。動きを見守った鹿戸師も「自分のリズムで走れていた。だんだん大人になってきたね」と満足顔だ。

 馬場状態も後押しする。今開催の阪神芝で逃げた馬の勝率は17・4%、連対率39・1%。続く先行馬の同13・6%、24・7%を上回っている。単騎マイペース逃げが濃厚なセットアップが、前が止まらない芝で主導権を奪えば…。実は朝日杯FSは阪神開催となった14年以降、逃げ切りVは一度もなし。不安に思う読者には、こんな競馬の格言を。「逃げ馬は忘れた頃にやってくる」。

 《横山武の得意戦法》今回はスタート後の最初のコーナーを先頭、もしくは3番手以内で通過し、その後にハナに立った馬を「逃げ馬」と定義した。「先行」「中団」「後方」は、おおよそで出走頭数を3等分した位置取り。例えば16頭立てなら先行=2~6番手。中団7~11番手、後方はそれ以下というイメージだ。逃げ馬の勝率は他の戦法に比べ総じて高いのだが、2歳戦になるとさらに数字が跳ね上がる。今年、2歳新馬戦が始まった6月以降~先週までの2歳戦で逃げた馬の勝率は22.4%、連対率は41.1%。別表で比較すると他の戦法、また同期間の3歳以上の数字と比べても突出していることが分かる。ちなみに阪神芝に限定しても勝率27.7%、連対率46.8%と優秀な数字を残している。

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