ケインズの子供 二刀流で活躍する日を楽しみに

2023年12月13日 10:35

21年、圧倒的な走りでチャンピオンズCを制したテーオーケインズ

 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は大阪本社の新谷尚太(46)が3日のチャンピオンズC4着を最後に引退したテーオーケインズ(牡6=高柳大)を取り上げる。現役時代の思い出や来年から種牡馬としての第2の馬生について、小笹公也オーナーに胸の内を聞いた。

 惜しまれつつ現役生活にピリオドを打った。テーオーケインズのラストランとなったチャンピオンズC。道中、好位からの競馬で見せ場をつくった。逃げ切ったレモンポップと0秒3差の4着に敗れたが、まだまだやれる――。そう思えるレースぶりだった。振り返れば19年10月のデビューから国内外で25戦、ダート一本で勝負した。21年帝王賞でビッグタイトルを獲得すると同年チャンピオンズCは2着チュウワウィザードに6馬身差の圧勝。JRA賞最優秀ダート馬に選出された。22年サウジC8着で初海外を経験。心身ともに大きく成長した。帰国後は平安Sを快勝、帝王賞4着を挟み、秋初戦のJBCクラシックをものにした。あれが最後の勝ち星となったが長く一線で活躍した。

 小笹公也オーナーに思い出を尋ねると「やっぱり21年チャンピオンズCですね。現地で観戦し、本当に圧巻の勝ちっぷりでした。ソダシがいて、実力馬のチュウワウィザードもいる中で1番人気。期待に応えてくれて想像以上の圧勝劇。記憶に残るレースになりました」と振り返る。

 トレセン関係者からの信頼が厚く、馬への愛情にあふれたオーナー。テーオーケインズが在籍していた高柳大厩舎への感謝の気持ちを口にする。「高柳先生をはじめ、スタッフの皆さんに大変、感謝しています。先生は考え方がしっかりされている。20年近く馬主をしていますが初めてG1を獲らせていただきました。素晴らしい結果は厩舎の尽力があったからこそだと思います」と語った。

 今後は第2の馬生が始まる。北海道新ひだか町のアロースタッドで種牡馬入り。初年度の種付け料は250万円と発表された。夢の続きは産駒に託される。「厩舎スタッフから、ケインズは芝に使っても面白そうと評価されてたんです。スラッとした姿勢で体形的に産駒の芝の走りも楽しみ。芝ダート二刀流で活躍する子供が生まれてくれたら」と心待ちにする。19年にディープインパクトがこの世を去り、種牡馬リーディングは戦国時代。同期にG16勝馬イクイノックス、同じくアロースタッドで種牡馬入りする海外G12勝馬パンサラッサなどがいる。「G1とJpn1を合わせて3勝、そして海外(サウジアラビア、ドバイ)にも連れて行ってもらい、楽しみを与えてくれて感謝しています。私が所有している繁殖牝馬にも種付けする予定。種牡馬としても末永く頑張ってほしいですね」とエールを送った。

 ◇小笹 公也(おざさ・ともや)1963年(昭38)4月1日生まれ、大阪府出身の60歳。81年プロボクサーとしてデビュー。84年に現在の株式会社オンテックスの前身となるオザサ塗装工業を設立。02年オンテックスグループ代表取締役会長兼CEOに就任。地方競馬の馬主登録後、03年8月にJRA馬主資格を取得。06年、同大商学部卒。自身のイニシャルが由来である「テーオー」の冠名で競走馬を所有する。21年チャンピオンズC(テーオーケインズ)でJRA・G1初制覇。冠名「ホウオウ」で知られる馬主の小笹芳央(よしひさ)氏は2歳違いの兄。

 ◇新谷 尚太(しんたに・しょうた)1977年(昭52)4月26日生まれ、大阪府出身の46歳。18年5月から園田競馬を担当、同年10月に中央競馬担当にコンバート。前職は専門紙「競馬ニホン」の時計班。

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