エスポワールシチーのBCクラシックで痛感した海外の難しさ

2024年2月16日 05:05

 【競馬人生劇場・平松さとし】今週末、フェブラリーS(G1)が行われる。

 10年に同競走を優勝したのが栗東・安達昭夫厩舎のエスポワールシチーだ。同馬はこの時点で5連勝。その中には前年のジャパンCダート(G1、現チャンピオンズC)と2つの交流G1も含まれていた。正に当時のダート界の頂点を極めた馬だった。

 フェブラリーSを優勝した後はかしわ記念で前年に続く連覇を達成。休み明けの南部杯こそ2着に敗れたが、更に続く1戦では勇躍米国へ遠征。ブリーダーズCクラシック(G1)に挑戦した。

 この年の同レースはこれが現役ラストランとなるゼニヤッタ一色といったムード。そんな中、果敢に挑んだエスポワールシチーだったが、結果は残念ながら12頭立ての10着に敗れてしまった。

 「ごく軽いものでしたが、到着後に腹痛になるなど、海外遠征の難しさを痛感させられました」

 そう語ったのは安達師だが、実際、日本のダートの王者は、かの地でさまざまな洗礼を受けていた。

 砂質が日本とはまるで違うことなどは事前に分かっていたので仕方ないし、発馬直前にメンコ(耳覆い)を外す際、係員の手際が悪く手間取ったのはアクシデントなのでこれもまた仕方ないだろう。

 しかし、返し馬を日本と同様にやらせてもらえなかったのは誤算だった。陣営は馬場入り後、1頭ですぐに返し馬ができるようリクエストをしていたそうだが、現場にしっかり通達されていなかった。返し馬に移った瞬間にポニーが追いかけてきて、エスポワールシチーをラチ沿いまで押しやって止めさせた。以降はずっと横に張り付いて離れなかったのだ。

 もちろん、こればかりが敗因ではないだろうが、ルーティンを崩されたのは間違いなく、関係者は海外遠征の難しさを痛感したのだった。

 今年のフェブラリーS前日にはカタールで3頭の日本馬、すなわちサトノグランツ、ゼッフィーロ、ノースブリッジが出走するアミールトロフィーがある。取材すべく私も現地入りしているが、果たして朗報をお届けできるだろうか。期待したい。 (フリーライター)

特集

2024年2月16日のニュース