凱旋門賞は“体重が軽い馬が有利”?
2025年10月1日 05:05 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は、大阪本社の田井秀一(32)が担当する。今週末にパリロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞の定説“体重が軽い馬が有利”について考察した。
馬体派にとって、世界一を争う凱旋門賞のパドックは垂涎(すいぜん)もの。毎年、ひいき目なしで日本勢は横の比較で“立派”に見える。でも、勝てない。近年、まことしやかに「凱旋門賞は馬体重の軽い馬が有利」と言われるようになった。
それは好走した日本馬の体重のレンジが偏っているからだろう。現地での測定がないため正確な数字は分からないが、2着に好走したエルコンドルパサー、オルフェーヴル、ナカヤマフェスタは日本出走時の体重が450~470キロ台。06年3位入線(のちに失格)のディープインパクト、近10年で唯一掲示板に入ったスルーセブンシーズ(23年4着)の2頭も前走の宝塚記念は440キロ台で出走していた。
ジャパンCで来日して馬体重が判明した凱旋門賞の勝ち馬8頭を別表にまとめた。平均値は464・75キロ。500キロ超えはキャロルハウスのみだった。しばらく凱旋門賞馬の来日はないが、19年覇者ヴァルトガイストが前年の香港ヴァーズ出走時に419キロであったことが判明している。馬体重の軽い馬が有利なのは日本勢に限ったことではないようだ。コースの起伏が激しいだけでなく、雨が降れば脚が取られるほどに重くなるパリロンシャンの芝。バランス能力が求められるならば、体幹が強い軽量馬にアドバンテージがあることはイメージしやすい。
さて、今年挑戦する日本勢3騎の直近の日本での出走時馬体重は、ビザンチンドリーム=454キロ、アロヒアリイ=492キロ、クロワデュノール=504キロ。データ上はビザンチンが有利ということになる。同馬はサウジのレッドシーターフH優勝後、早々に凱旋門賞挑戦プランが浮上。陣営が決断した理由の一つに、馬体のサイズもあったという。坂口師は「心肺機能がいいし、体も軽いので。日本馬が好走しているのは450~460キロの馬が多い。バランスが起きて走る馬なので、それもいいのかなと考えた」と説明する。本番と同じコースで行われた前哨戦フォワ賞を完勝しているのだから、その見立ては確かだったと言えるだろう。
とはいえ、今年行われた大規模改修工事によって、名物フォルスストレートの排水が改善。凱旋門賞の傾向がガラッと一変する可能性も十分にある。長たらしく分析してきたが、最後は日本勢の応援あるのみ!3頭の健闘を祈って、今年もパドックからワールドクラスのサラブレッドたちの競演を堪能したい。
◇田井 秀一(たい・しゅういち)1993年(平5)1月2日生まれ、大阪府出身の32歳。高校卒業後に道営競馬で調教厩務員を務めた。阪大卒。19年から競馬担当。予想の根拠の99%は馬体。