英国の新星モルティーズクロス「誰もが凱旋門賞を勝ちたい」名伯楽の夢を乗せ、伝説の父に続くか
2026年10月1日 08:30 芝12F路線におけるフランス最高峰の一戦「第105回凱旋門賞」(G1、10月4日、パリロンシャン芝2400メートル)が目前に迫る中、英国のウィリアム・ハガス師(66)がフランスギャロ主催の公式記者会見に臨んだ。
アデイブやドバイオナー、バーイードらで数多くのG1を制しているハガス師が送り出すモルティーズクロス(牡3、父シーザスターズ)に熱い視線が注がれている。映画プロデューサー、ジョージ・ウォード氏の勝負服をまとう、この若き才能は連覇を狙う王者ダリズの最大の挑戦者として、虎視眈々(たんたん)とチャンスをうかがう。
ハガス師にとって凱旋門賞制覇はまだ実現していない夢。ニューマーケットのサマーヴィル・ロッジを拠点に、モルティーズクロスとともにパリロンシャンに戻ってくる。18年にシーオブクラスで2着に敗れてから8年。連覇を成し遂げた名牝エネイブルに後方から迫りながらも短首差で涙をのみ、ハガス師にとっては同じ英国調教馬が勝ったことによる誇らしい気持ちと悔しさが入り交じり、鮮明に記憶に残っている。
モルティーズクロスの血統を紐解くと、その父はアイルランドで調教され、09年凱旋門賞馬であり、ハガス師が「私が今まで見た中で最高の馬」とまで断言するシーザスターズ。英2000ギニー、英ダービー、エクリプスS、インターナショナルS、愛チャンピオンS、そして凱旋門賞と、ホースマンが夢見るタイトルを同一年に総なめにした伝説の名馬だ。
ハガス師はモルティーズクロスが父シーザスターズと共有する、ある特性について言及した。それは「わずかな差でしか勝たない」という点です。父もまた、決して大差で圧勝するタイプではなかったが底知れない能力で勝利を重ねた。モルティーズクロスも同様に、ぎりぎりの勝負を制する強さを見せており、この血統的な共通点が大舞台での勝負強さにつながるかもしれない。
「今年、彼の全てのレースが前のレースよりも良くなっている」とハガス師が語るように、そのパフォーマンスは右肩上がり。特に2走前のパリ大賞の勝利は、その強さを決定付けるものだった。「難しい状況を克服して勝利した時、初めて私に真のスピードを見せてくれました」と振り返るように直線、さばくのに手間取りながらも勝ち切り、精神的な強さを兼ね備えていることを証明した。
また、前走グレートヴォルティジュールS(G2)は終盤に卓越したスピードを見せ、他馬を圧倒。別定の負担重量でG1を勝っていないメンバーより5ポンド(約2.27キロ)背負っていながら、レーティング的にもキャリアベストのパフォーマンスを披露した。
ハガス師は英セントレジャー(芝2900メートル)という英国の権威あるクラシック3冠最終戦よりも、芝2400メートルの凱旋門賞こそが「最も適したレースだと常に感じていた」と語り、この馬への確信がうかがえる。
18年、ハガス師はシーオブクラスで凱旋門賞に挑戦し、エネイブルの2着に終わるという、喜びと悔しさが入り交じる経験をした。「あと100メートルあれば勝っていたのでは」と今でも、あの惜敗を語る師にとって今週末はまさに悲願成就を懸けた大一番になる。
馬主のジョージ・ウォード氏は今回の凱旋門賞出走を心底、楽しんでおり、100人のシンジケートメンバーを抽選で招待するなど、まさに「お祭り」のような雰囲気をつくり出している。ハガス師も「オーナーはこの経験を最大限に楽しんでいます。誰も彼を止めることはできません」と、その熱意を感じている。
状態に関しては「彼は肉体的に向上したと思います。調教では特に目立つタイプではないので、評価は難しいけど調教は満足のいくものでした。10日ほど前には競馬場に連れていき、無理なく、いい調教ができたので、とても満足しています。すぐに調子を上げられる馬で、それほど多くの調教を必要としません。しかし、彼はエネルギーがあり過ぎることもあります。ですから、適切なバランスを見つける必要があります。十分に負荷をかけながらも疲れさせないようにしました」と好感触。気になる馬場状態については「どうすることもできない」と前置きしつつ「馬場状態がどうであろうと彼には合うでしょう」と自信をのぞかせる。
「凱旋門賞の出走馬に携わる全ての人が参加できることに喜びを感じるでしょうし、誰もが凱旋門賞を勝ちたいと思っています。それが私たちであることを願うばかりです」。ハガス師の言葉にはフランス最高峰の舞台で頂点を目指す強い意志が込められている。伝説の父シーザスターズの血を受け継ぎ、名伯楽の悲願、そしてオーナーの熱い思いを乗せて、頂点へと駆け上がることができるのか。陣営の期待は日に日に高まっている。
