【札幌記念】トーラスジェミニの堀内助手 フェスタの経験を生かして重賞獲りだ

2020年8月21日 10:17

乗り運動するトーラスジェミニと堀内助手

 かつてのパートナーを称える言葉は途切れることがなかった。凱旋門賞で2着だった日本馬4頭の中で、最も勝ち馬との着差が小さかったのが10年のナカヤマフェスタ。勝ったワークフォースとは僅かにクビ差。ただ、そんな名馬にしては世間の評価が低過ぎないだろうか。現役時の担当スタッフで、現在は小桧山厩舎に籍を置く堀内助手は、「もっと走らせてあげることができたんですが、僕の経験不足でした」と自戒の念を込めながら振り返った。

 「あの馬は本当に頭が良かったから、調教に行くのを嫌がったんです。3歳の頃はごねるとムチを使っていたんですが、余計に反抗する感じで…。勝てると思っていた年末の中日新聞杯で惨敗した時、“このままじゃダメだ”と気付いて、方針転換したんです」

 4歳以降は無理強いをせず、やる気になるのを待つなど、馬の気持ち重視の調整に変更。これが奏功し、復帰戦のメトロポリタンSを快勝することができた。「あの時は“立て直せた”と思いましたし、一番嬉しかったレースです」。続く宝塚記念でG1初制覇。「正直、7分の出来でブエナビスタを負かしたんです。本気で走った時の勝負根性は本当に凄かったですよ」と誇らしそうに明かした。

 あれから10年、奇しくも凱旋門賞で首差先着を許したワークフォースと同じ、キングズベスト産駒のトーラスジェミニで北海道シリーズに参戦している。

 「素直で、何より気持ちが前向きなのがいいですね。重賞の1つぐらいは…と思っているんですよ」

 とにかくハナさえ奪えれば渋太い。前々走の巴賞でオープン初勝利を挙げると、前走の函館記念も0秒4差の4着。逃げ先行馬には厳しい流れだったので、大健闘と言える。実はこの一戦が夏の最大目標だったが、「その後も調子落ちがないどころか、さらに気持ちが前向きになってるんです」と嬉しい誤算に笑み。今回はかつてない強敵と相対することとなるが、「自分のペースで行けさえすれば、チャンスがないことはないはず」と腕を撫す。

 ナカヤマフェスタは17年に種牡馬を引退したが、産駒の活躍を受けて19年に復帰。バビットが7月のラジオNIKKEI賞を制して産駒2頭目の重賞ウイナーになるなど存在感を見せている。「フェスタの経験は今に生きてますね。日々、その馬の持ってる力を全部出したいという思いでやってます」と堀内助手。あの宝塚記念以来、自身10年ぶりとなる重賞制覇となれば、何よりの恩返しとなるはずだ。

 ◆堀内 岳志(ほりうち・たけし)1973年(昭48)10月5日生まれ、大阪府吹田市出身の46歳。日本大学理工学部で物理を専攻していたが、馬の道を志して中退。茨城県の内藤牧場を経て、02年4月に富田厩舎のスタッフに加わった。03年10月に二ノ宮厩舎に移籍すると、10年宝塚記念を制したナカヤマフェスタを始め、モアザンベストやフェニミンガールなどを担当。18年2月の厩舎解散に伴って小桧山厩舎に移った。

特集

2020年8月21日のニュース