【競馬人生劇場・平松さとし】凱旋門賞の勝馬投票券がJRAから発売されると発表があった。ディアドラ（牝6＝橋田）が出走を予定しているからだ。

　17年の秋華賞馬は昨春、ドバイ、香港と転戦。その後も帰国せず英国に渡ると、ニューマーケットをベースに世界中を転戦し続けている。もはや地元とも言える英国はもちろん、昨年の暮れには3度目の香港、今春にはサウジアラビアへ遠征。昨夏には英国でナッソーS（G1）を優勝後、ちょうど1年前の今くらいの時期にはアイルランドへ飛んだ。愛チャンピオンS（G1）に挑戦すると、残念ながら4着に敗れたものの、ゴール前では勝ったマジカルに迫る末脚を披露した。

　そんな彼女と共に世界中を巡っているのが現在50歳の込山雄太調教助手だ。アイルランドへはレース前日に移動。当時、彼は言った。「チャーター機のトラブルで予定より8時間も余計にかかっての移動になりました。それでも精神的にしっかりした馬なので、大きな影響を受けることなく走ってくれたと思います」

　負けたものの決して不満そうではなかった。しかし、英国初戦のプリンスオブウェールズS（19年6月、G1）の際は彼が表情をゆがめて次のように語るシーンがあった。「自分自身、初めてのニューマーケットでの調教ということで少しハードにやり過ぎてしまいました。それでいったん、立て直す形になりました。ディアドラには申し訳ないことをしてしまいました」

　今年に入ってからはコロナ禍の影響で取材に行くだけでも迷惑になる状況が続いている。そのため、詳しい状況は分からないが、近走の凡走から本来の状態ではないのかな？という推察はできる。すでに1年半に及ぶ海外遠征でもありさまざまな事態に見舞われていてもおかしくはないだろう。しかし、プリンスオブウェールズSの次走ナッソーSでは見事に立て直して優勝したように、凱旋門賞では本来の彼女の姿が見られることを期待したい。（フリーライター）