【菊花賞】コントレイル、全ては戦略家・矢作師の計画通り

2020年10月22日 05:30

矢作芳人調教師

 最終追いの朝、栗東トレセンには張り詰めた空気が漂っていた。コントレイルの父であるディープインパクトの菊花賞最終追い切りには200人を超える報道陣が殺到した。追い切り後に武豊が騎乗したままスタンド前で輪乗りをする異例の措置が取られたほど。今年は新型コロナ禍で取材人数に制限を設けられているものの、当時をほうふつさせる熱気。父子無敗の3冠制覇が懸かるコントレイルは、午前6時3分に坂路へ入場。

 追い切りを見守った矢作師は「予定より速くなった。でもこの馬は53秒台を予定すれば、52秒台になるような馬だから全く気にしていない」と4F52秒5の時計は想定のうち。一方で「前半のラップが速くなった分、ラスト1Fは(時計が)かかったので、見栄えがいいとは思わなかった」とも言う。これは苦言ではなく感想だ。見栄えは良くなくとも、中身に不安はない。その証拠に笑みが絶えることはなかった。

 この日の栗東坂路は馬場が重く、1番時計のローザノワール(4歳オープン)が4F51秒2~1F13秒9と上がりが遅くなっている。馬場状態を確認したトレーナーは「あれは優秀な時計だったと思います」と付け加えている。

 矢作師の本質は戦略家だ。番組選定もライバルの力量を測り、展開や馬場の巧拙も加味することで知られる。では今回の菊は。

 「相手は考えないようにしています。普通の馬なら、能力やポジショニングを考慮してレースを組み立てるけど、コントレイルに関しては考えたことがない。本当に楽な馬だね」

 コントレイルに関しては、司令官はデビュー前に最善のレールを敷いた。その計画通り菊まで来た。ゲームでもここまでうまくいかないレベル。そこにはコンディショニングの妙がある。全6戦とも最終追い切りの手綱を取ったのは金羅助手。「馬場が重たかったけど、予定通りでした。馬なりで促さず、気持ちを乗せすぎないように」と意図を説明。「坂路へ行くとスイッチが入るので、時計を出しすぎないように心掛けました。我慢が利いていた」。大仕事を一つ終えた、ホッとした表情だった。

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