【天皇賞・秋】グランアレグリア3階級制覇へV仕上げ!最強マイラーの盾挑戦は藤沢哲学の集大成

2021年10月28日 05:30

コントラチェック(左)と併せて追い切るグランアレグリア(撮影・郡司 修)

 有終の3階級制覇だ。「第164回天皇賞・秋」(31日、東京)の追い切りが27日、美浦、栗東トレセンで行われ、短距離女王グランアレグリアが2000メートル克服を予感させる走りを見せた。1200メートル、1600メートルでのG1・5勝のスピードで最後の盾獲りに挑むのが来年2月で引退する“レジェンド”藤沢和雄師(70)。尾形藤吉元調教師に並ぶ史上最多の天皇賞・秋7勝に王手をかけた。同レースは28日に出走馬と枠順が確定する。 

 傑出したスピード。まばたきする間もなくリードホースに並びかける。スペイン語で大歓声(グランアレグリア)と名付けられた藤沢和厩舎最後の傑作。来年2月で70歳定年を迎える名伯楽はその走りを見届けると、自ら手掛けた一流マイラーの名を口にした。

 「当時、天皇賞に出走資格がなかったシンコウラブリイやタイキシャトルで挑むようなものだな。みな2400メートルにも対応できるスタミナ十分の馬だった。今回は初めてマイルに強いスピード馬で挑む。3階級制覇なんて今の時代ではあり得ないが挑戦する価値はある」。スプリント、マイルに続くミドル(2000メートル)のG1タイトル。名伯楽が最後の天皇賞に懸けるのは未到の3階級Vだ。

 張りに満ちた鹿毛が8馬身先行するコントラチェック(5歳オープン)に造作もなく併入した。鞍上・ルメールの手綱は抑えられたままラスト1F11秒7の瞬発力。だが、名伯楽を満足させたのはその極上の切れ味よりも道中の余裕だった。「若いうちはやる気が十分過ぎて暴走気味だったけど、今は穏やかになってハンドルが利く。だから、2000メートルに挑める。追い出しを待てる余裕があったバブルガムフェローみたいに…」。厩舎初の天皇賞馬の名を挙げながら操縦性を強調する。

 鞍上の指示を守れるのは教育の成果だ。馬主でも手綱を引けるほどしつけられたスピルバーグのように…。「若い頃に比べたら随分食べるようになって、一段とたくましくなった」。古馬になっても成長して秋の天皇賞連覇を飾ったシンボリクリスエスのように…。「よく食べる分、大きなWコースで十二分に調教してきた」。太りやすい体質だったため運動量を増やして重め残りを解消したゼンノロブロイのように…。「(桜花賞を勝つほど)若い頃から走ってきた馬が5歳になっても諦めずに競馬ができる。そんな馬はいくらもいない」。ダービー制覇後も前向きさを失わず古馬になって天皇賞を制したレイデオロのように…。

 競走馬はスピード…が歴代最多のG1・33勝を積み上げた名伯楽の哲学。スピードで次の距離ステージを目指すことが競馬を進化させる。「ごまかしの利かない東京の2000メートルをスピードで勝たせたい」。自ら手掛けた秋の天皇賞馬5頭のエキスが凝縮された最後の傑作。最強マイラーの盾挑戦は藤沢哲学の集大成だ。 

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