香港で当地厩舎の依頼も…さすが“世界のユタカ”
2022年12月16日 05:20 【平松さとし・競馬人生劇場】
12月11日、香港のシャティン競馬場で香港国際レースが行われた。
芝2400メートルで行われた香港ヴァーズ(G1)を日本馬のウインマリリン(牝5=手塚)が快勝したのは皆さんご存じの通り。現地で観戦していると、当方にまでほうぼうから「おめでとう」と声をかけられ、誇らしい気持ちになった。
そして、毎度、そんな気持ちにさせてくれるのが、日本を代表する名手・武豊騎手の存在だ。
今回はメインの香港カップ(G1)でジャックドール(牡4=藤岡)の手綱を取るために海を越えた。
「パドック、返し馬と落ち着いていたけど、ゲート裏の輪乗りあたりから変に気が入ってしまい、ゲートの中ではジッとしてくれませんでした」
武豊騎手がそう語るように枠入り後、急きょゲートボーイが駆けつける始末。結果、本来のスタートダッシュを決められず、7着に終わった。
この結果は残念だったが、それでもさすが“世界のユタカ・タケ”と感じさせる出来事があった。
香港入りした日本のNo・1ジョッキーは、ジャックドール以外にも騎乗した。1頭は香港ヴァーズのブルーム。キーファーズの松島正昭氏が共同馬主に名を連ねるとはいえ、アイルランドの伯楽A・オブライエン調教師からのオファーだった。そして、そればかりか、平場戦ではローカル馬の騎乗依頼も舞い込んだ。
依頼したのはC・W・チャン調教師。同厩舎の日本人オーナーの馬に乗ってもらう予定でいたが、その馬は前倒しで使う事になり、一度は話が立ち消えた。ところが……。
「何としても日本のレジェンドに乗ってほしかったので、別の馬をお願いしました」とチャン師。
既走馬相手に初出走だったこともあり、スタートから置かれ気味になり、結果は芳しくなかった。そのため、レース後「レジェンドに申し訳なかった」と語った同師だが、その表情に憧れが感じられたのが印象的だった。 (フリーライター)