【有馬記念】スルーセブンシーズ97点 凱旋門賞経てトモと腹に厚み 心と体のバランス取れ完成形に

2023年12月19日 05:24

スルーセブンシーズ

 七つの海を渡った牝馬が混戦グランプリに断を下す。鈴木康弘元調教師(79)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。今週は有馬スペシャルとして5つのチェック項目(各20点満点)で出走15頭(検疫中のシャフリヤール除く)を採点。今秋ただ一頭、凱旋門賞に挑んだスルーセブンシーズに最高点の97点を付けた。達眼が捉えたのはフランスへの長旅を経て劇的に変化したトモ(後肢)と腹だ。

 旅は若者を育てると言ったのはフランスの哲学者モンテーニュだったか。その名言は「若者」を「馬」に置き換えれば競馬の世界でも通用します。スルーセブンシーズ。馬名の通り、七つの海を越えて渡仏した長旅はこの馬を大きく育てました。凱旋門賞遠征の前と後では馬っぷりが全然違う。宝塚記念(2着)時には「トモと腹が薄い」と書きましたが、今回はトモにも腹にも厚みがある。モヤシっ子が大豆に育ったような急成長ぶり。年齢的に伸びしろが望めない5歳牝馬を一変させたのはフランスへの旅だったのでしょう。

 父系伝来の激しい気性。“黄金旅程”こと祖父ステイゴールドから“夢の旅”こと父ドリームジャーニーへ伝えられた比類なき闘争心は七つの海を越えた牝馬にも受け継がれています。刃物の切っ先のように鋭くとがらせた大きな耳、射すくめるような覇気のこもった目…。フランス遠征を挟んで、闘志あふれる強い心に体も追いついてきた。心と体のバランスが取れた名牝の完成形です。

 有馬記念の馬体診断では5つの項目別に採点。スルーセブンシーズの劇的な変化は特別な押し材料を加点する「プラスα」20点満点です。「筋肉」も満点。量より質の弾力性に富んだ筋肉も父系伝来です。「表情&姿勢」も闘志満々のステイづらだけに満点。「毛ヅヤ&腹周り」は採点しづらい。上半身を欧州馬のようにクリッピング(毛刈り)しているからです。冬は被毛が長くなって乾きづらい。内臓を冷やさないように刈っておくのです。クリッピングしていない前腕とスネの下に冬毛が見えるため1点減点しましたが、牝馬は冬毛が伸びやすいので問題ありません。

 旅は馬を育てる。七つの海を越える長旅がグランプリのヒロインに育てました。 (NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の79歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~2004年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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