同じ京都で夢を見せてくれたナリタセンチュリー
2024年6月20日 10:35 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く「書く書くしかじか」。今週は大阪本社の寺下厚司(40)が担当する。06年以来の京都で開催される宝塚記念。18年前、勝ち馬ディープインパクトに続く2着に食い込んだ伏兵ナリタセンチュリーにスポットを当て、今年の馬券のヒントを探った。
前回、京都で開催された宝塚記念は06年。まだ入社前だったが、当時のレースは鮮明に覚えている。武豊騎乗のディープインパクトは単勝オッズ1・1倍。勝負どころの下り坂で一気に加速し、ファンの夢に応える4馬身差の圧勝だった。
ゴール前で2着に浮上したのは10番人気の伏兵ナリタセンチュリー。管理した藤沢則雄師に当時のことを聞いた。例年の阪神ではなく、京都開催の宝塚記念でG1初制覇の夢を描いていたという。「阪神があんまり得意じゃなかったからね。京都の宝塚記念で“やった”と思った」。04年京都大賞典&05年京都記念でG2勝ち、当地芝レース4勝。舞台巧者にとっては願ってもないチャンスだった。
「最初はディープも出ないんじゃないかと聞いていたし、これはチャンスが回ってきたなと思っていたら登録してきて…」。それでもレースで一瞬、夢を見た。中団の内で脚をため、手応え良く直線へ。「主戦だった田島裕和も4コーナーを回って“よっしゃー、勝った”と思ったみたい。そこから(ディープが)ピューッと伸びてきて…。それでも頑張ってくれたし、京都で開催されたのは大きかったと思う」と振り返った。
惜しくもG1タイトルには届かなかったが、師にとっては特別な思い入れがある1頭。厩舎を開業して間もない99年セレクトセール(2152・5万円)で出合った原石。「トニービン産駒が欲しくてね。ちょっと気が荒いのは分かっていたけど小さくてもいい馬だなと思った」と懐かしむ。
母プリンセスリーベは3歳時まで橋口弘次郎厩舎に所属。「お母さんは千二以下で走っていたので、橋口先生からも“馬って分からないね。何で君のところは2400メートルでも走るんだ”と言われた。スピードもあって最初はマイルも使っていたが、距離を延ばしていって適性を見せてくれたんだよ。初めて重賞を勝ってくれて結果を出してくれたね」と目尻を下げた。
久しぶりに行われる京都開催の宝塚記念で狙いたい京都巧者がいる。プラダリアはナリタセンチュリーと同じ京都大賞典&京都記念の勝ち馬。管理する池添師も「この馬にとって一番いい条件だと思う。スタートしてから距離があるし、出して行っても掛からないからポジションを取りやすい。下り(坂)を生かせるのもいいと思う」。父は18年前にセンチュリーを負かしたディープインパクト。京都開催の宝塚記念で“父子制覇”も夢ではない気がしてきた。
◇藤沢 則雄(ふじさわ・のりお)1954年(昭29)8月19日生まれ、北海道出身の69歳。79年から栗東・島崎宏厩舎で調教助手を務め、98年に調教師免許を取得。翌99年に厩舎を開業した。04年京都大賞典をナリタセンチュリーで勝ち、JRA重賞初制覇。JRA通算5236戦299勝(うち重賞8勝)。
◇寺下 厚司(てらした・あつし)1983年(昭58)10月22日生まれ、京都市出身の40歳。阪大工学部卒、東大大学院中退。09年秋から競馬担当(東京→大阪)。昨年の宝塚記念は◎スルーセブンシーズが2着。今年こそ勝ち馬を探したい。