“みちのくの達人”中舘師に聞く!福島攻略法 思い出の地を解説
2024年6月26日 05:30 東京、京都開催が終わっていよいよ本格的なサマーシーズンに突入する。夏競馬の水曜新企画は「夏は自由研Q」。担当記者が夏に関するテーマを考え、関係者に質問をぶつけて深掘りする。初回は東京本社の田井秀一(31)が担当。ファンにとっては難攻不落な福島競馬の攻略法を、騎手時代に春夏秋合わせて計16度の開催リーディングを獲得したみちのくの達人・中舘英二師(58)に聞いた。
夏競馬の計は福島にあり!?昨夏はわずか4週間で3連単200万超が2本、同10万超は23本も飛び出した。荒れる福島で出はなをくじかれないためにも、その特性を理解しなければ…。
解説役をお願いしたのは中舘師。騎手時代にはJRA通算1823勝のうち425勝を福島で挙げた。
「思い出はたくさんあるけど、騎手人生が変わったのは初めて夏の福島リーディングを獲得した92年。岡部(幸雄)さんに競り勝つことができて、小回りコースが得意だとイメージがついた。一気に良い馬が回ってくるようになった」
当時の関東リーディング絶対王者を1勝差で振り切った戴冠が自信につながった。翌93年の夏も七夕賞をツインターボで逃げ切るなど活躍し、2年連続のリーディング首位。引退するまでに春夏秋合わせて16度の開催リーディングを獲得した。「騎手として(飛躍の)きっかけをつくってくれたのが福島競馬場」と感慨深げに振り返る。
03年から7年連続、通算9回の福島年間最多勝を記録。厳しいマークにさらされても勝ち続けられた達人の言葉から、みちのく攻略の糸口を探る。
<1>ギアチェンジできる馬
芝Aコースの直線距離は292メートル。直前の東京開催より200メートル以上短くなる。直線に上り坂はあるが、乗り手の感覚は「ほぼフラットな小回りコース」で、有利なのは「ギアチェンジができる馬」。多少の能力差があっても操縦性の高さで逆転が可能。「力があってもリズムを崩すと勝利を逃しやすいコース。外を回りすぎてもダメだし、内で詰まってもダメ。自分は1~2角を上手に回ることを意識していた。コーナーを優位に使える、マイナス材料が少ない馬がいい」。末脚特化など一芸に秀でた馬よりは、機動力や総合力で勝負できる馬が狙い目だ。
<2>芝状態は千変万化
コースの形態上、基本は内・前が有利だが「4週間の中でも芝のコンディションがガラッと変わる。その見極めは重要」となる。良馬場でスイスイ逃げた馬が道悪になるとピタッと止まる。その逆もしかりだ。
昨夏は開幕初日の芝がやや重で逃げ切り0。良に回復した2日目は一転して前残りが多発した。開催前後半や、降雨の有無で「全く別ものになる」という馬場状態には細心の注意を払う必要がある。
<3>騎手の準備力
中舘師が馬の力関係と同等以上に気にしていたのは乗り役の構成。「他のジョッキーの性格を把握して、あの人なら早めに捲ってくるぞ、この人は内にこだわるだろうな、とか考えていた。馬は生き物なので全て思った通りになるわけではないけど、準備は重要」と力説する。
自身が調教師に転身してから騎手に細かく作戦指示を出すことはないが「それ(考えて乗る)ができる騎手を起用しているつもり」と言い切る。昨夏の福島で最多起用した田辺は19年以降5年間の福島コース成績が【35・28・19・103】。単複回収率が100%を超える。昨年起用が増えた佐々木は、昨秋の開催リーディングを獲得。福島を最も知る男の鞍上選択は要チェックだ。
◇中舘 英二(なかだて・えいじ)1965年(昭40)7月22日生まれ、東京都出身の58歳。84年に騎手デビュー。15年に調教師に転身するまでに歴代12位のJRA通算1823勝を挙げた。うち重賞30勝、G1は93年阪神3歳牝馬S、94年エリザベス女王杯=ヒシアマゾン、07年スプリンターズS=アストンマーチャンの3勝。