【ダービー】ロブチェンで“三度目の正直”Vへ 杉山晴師「ふさわしい状態に持っていくだけ」
2026年5月29日 05:20 【見たこともない景色(5)】今の時代ふさわしい表現ではないが、それでもあえて使いたい。ロブチェンを管理する杉山晴師はおとこ気にあふれている。武宏平厩舎の助手時代に携わった09年菊花賞馬スリーロールスは同年有馬記念のレース中に故障し競走中止。その後、このケガが原因で引退した。「人間って悪いことは忘れてしまうので。自分への戒めです」と今もなお、ロールスの名をメールアドレスに残す。16年の開業時に「誰かの責任にしないこと」を厩舎のスローガンに掲げ、失敗から目を背けず信念を貫き、毎年コンスタントに結果を残し続けている。おとこ気を超えて「漢」との表現が似合う。
18年にケイティブレイブで京都開催のJBCクラシックを制し、20年にはデアリングタクトで牝馬3冠制覇。23、25年とJRAリーディングを獲得し、今年も25勝で首位といい流れで来ている。自身にとっては3度目の頂上決戦。22年はジャスティンパレスを送り出し9着、2頭出しの昨年はサトノシャイニングが4着、ジョバンニは8着だった。今年は堂々、主役としてダービーを迎える。「今までと違って、皐月賞馬ですので背負うものは変わりますね」と語るにとどめたが言葉の端々から勝利への執念が伝わる。それでも変に力が入っているわけではなく「出走するのにふさわしい状態に持っていくだけです」と平常心を貫く。
馬に対する愛は変わらないが、幸せを感じる物差しは変わった。乗馬クラブに通った高校時代は毎日、馬に乗ることが幸せだった。助手時代、武宏師に調教メニューなどを一任され、馬が勝つことにやりがいを感じた。調教師になって11年目を迎え、改めて幸せについて問うと少し間を空けて返答があった。「凄く格好を付けるような言葉になりますけど、勝ってオーナーの笑顔を見ることが自分の幸せかなと思います」。厩舎の自室には口取りの写真が多く飾られていた。その笑顔こそが強い馬を育てる原動力でもある。新時代を担うトレーナーにとって、ダービー制覇は栄光の到達点ではなく、新たな景色に向かって踏み出す始まりの一歩になる。(入矢 美奈)=終わり=
◇杉山 晴紀(すぎやま・はるき)1981年(昭56)12月24日生まれ、神奈川県出身の44歳。04年7月に栗東・武宏平厩舎のスタッフになり、調教役を務めたスリーロールスが09年菊花賞V。14年2月末、師の定年引退による厩舎解散に伴って高橋康之厩舎へ。16年に調教師免許を取得し、同年10月に厩舎を開業。18年目黒記念(ウインテンダネス)で重賞初制覇、20年はデアリングタクトで牝馬3冠制覇。23年55勝、25年61勝で2度JRAリーディングトレーナーに輝く。JRA通算3297戦390勝、うち重賞28勝。
