シュヴァルグランに続くか 友道師ユーキャンスマイルで新たな物語
2020年11月6日 05:30 【競馬人生劇場・平松さとし】昨年の夏、一頭の日本馬が英国のチャンピオン路線に挑戦した。元メジャーリーガーの佐々木主浩氏がオーナーのシュヴァルグラン(栗東・友道康夫厩舎)だ。
ヴィルシーナの弟でヴィブロスの兄でもある同馬は、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1、アスコット競馬場)とインターナショナルS(G1、ヨーク競馬場)に果敢に挑戦した。ベースとしたのは競馬の聖地ニューマーケット。ここで調整されたシュヴァルグランは前日に競馬場入りし、当日の朝にはパドックやコースもスクーリング。当初、競馬場側は当日の馬場入りを嫌ったそうだが、陣営が交渉。コースの一部を開放してもらえることになった。
他にもパドックだけのメンコ装着やゲートインをなるべく遅くしてもらうなど、要求できるリクエストは全て通した。さらに競馬場の装鞍所では佐々木オーナーの現役時代の背番号にちなんで22番を確保。験も担いだ。
しかし競馬発祥の地の壁は高く厚かった。キングジョージ6世&クイーンエリザベスSでは女王エネイブルの6着、インターナショナルSはジャパンの8着に敗れてしまった。
2戦を振り返り、当時、友道調教師は次のように語った。
「ひと叩きした後のインターナショナルSは期待したけど、考えていたより後ろの位置取りになった上に、スローペースの上がり勝負でシュヴァルグランの持ち味を発揮できないまま終わってしまいました」
結局、失意のまま英国遠征を切り上げることになったが、その前のドバイシーマクラシック(G1)では後にジャパンCを勝つスワーヴリチャードやダービー馬レイデオロらに先着の2着。さらにさかのぼれば2017年にジャパンC優勝と、素晴らしい馬だったことは間違いない。
そんなシュヴァルグランが16年に制したのが今週末、東京競馬場で行われるアルゼンチン共和国杯(G2)だ。今年、友道調教師はユーキャンスマイルを送り込む。新たな物語が幕を開けるかもしれない。期待したい。 (フリーライター)