【川崎】騎手紹介⑥ 引退から再デビューしたベテラン「衰え感じない」 50歳の岡村裕基が「麺パワー」で躍動
2021年9月13日 12:00 自分の居場所はやっぱり競馬場だ――。川崎競馬で最年長50歳の岡村裕基は1度、引退し再デビューを果たした経歴の持ち主。
89年に川崎でデビューし、90年全日本新人王争覇戦で優勝。97年にはスパーキングレディーCでオートメンデスに騎乗して、南関重賞初制覇。地方通算413勝を挙げ、騎手会長も務めたが06年に引退した。
「いろいろあってモチベーションが上がらなかった。35歳だったし、第二の人生を考えるなら早めがいいかな」。子ども3人を抱えながらの決断だった。その後は「食べ歩きが好きだったから」と焼きそば店で修行。「店長までは行かなかったけど、製麺と焼きができるようになった」と振り返る。しかし、自分で店を持つまでには至らず、騎手時代の方が恵まれていたと実感した。
09年に厩務員として競馬に携わるようになると、次第に騎手復帰への気持ちが沸いてきた。3度試験に落ちたが、4度目で18年度第3回調教師・騎手試験に合格。当時48歳、実に13年ぶりの再デビューが決まった。「初心に帰って全力で頑張ります」と意気込みを語ると、19年4月30日、浦和6Rをプリプリクインダムで差し切り再デビュー後初勝利。通算414勝目を挙げ「平成元年にデビューして平成最後の日に勝てて良かった」とスピーチした。
騎乗で心掛けていることは「スタートは自分でも下手な方ではないと思うので、スタートしてしっかりいい位置につけ、外を回らないこと」と明かし、50歳となった今でも「衰えは感じない」と言う。「8鞍乗っても全然平気だしね」とスタミナにも自信を見せた。
同年9月には右足を粉砕骨折する大けがを負い、一時は騎手生命も危ぶまれたが4カ月で復帰と執念を見せた。「現在もしびれている」というが、戻ってきた場所で輝こうという気持ちが故障に優った。
オフの時間は美食を求めて歩き、最近では大田区雑色にある「宍道湖しじみ中華蕎麦 琥珀」がイチ押し店だという。山崎誠士騎手と一緒に行くことが多いと話し、行列必至の人気店だけに「しじみスープがおいしいね。ただ、朝早くいかないとダメなんだよ」と笑った。
焼きそば店で修行し、ラーメン店などグルメを愛する岡村。これからも「麺パワー」を発揮して味のある競馬を見せる。