【有馬記念】クロノジェネシス 進化した3歳の夏、NFしがらき池内厩舎長「僕としては信じられなくて」
2021年12月22日 05:30 史上初のドリームレース4連覇に挑む名牝の関係者に迫る特別連載「Genesis Pride~クロノジェネシス最後の挑戦」。第3回は第二の故郷、栗東近郊にある放牧先のノーザンファームしがらきを訪ねた。同馬を担当した池内将人厩舎長(32)と戦歴に目を向けながら、スーパーウーマンへ昇華する過程をたどった。
スーパーウーマンに昇華するターニングポイントはどこにあったか。答えは明確。池内厩舎長は「オークスの後、北海道に放牧に出た頃だと思います」と即答した。
クロノジェネシスとの出合いは新馬戦を勝った後だった。手のかからない女の子。「全ての牝馬がこうだったらいいな、というお手本のような馬。一切、無駄なことをしなかった」。順調に成績を重ねる一方、3歳春まではカイ食いに課題を残した。
「あの当時は少し加減しながら、体重を意識して“減らないかな”と思いつつ、やっていましたね」
3歳の夏、北海道に放牧へ。離れていても、タブレット端末で体重をチェックできた。オークスは432キロで出走。そこから大幅に増え、500キロという数字を見て、驚いたという。
「僕としては信じられなくて。500キロになるかなと。このあたりからはもう、カイバの心配はなくなりました。結構、食べてくれるようにもなりました」
しがらきでは900メートルの周回コースを3周、そこから坂路を1本上がるのがルーティンだった。「トレセンとは環境も違いますし、ゆったりと落ち着いた環境の中で調整できたかなと思います」。G1級の馬は夏場を北海道で休息に充てることが多い。クロノジェネシスが北へ向かったのは3歳夏だけ。「その時以外は、ずっとこっちにいたんですよ。こういう馬も珍しいと思います」と振り返る。
前走の凱旋門賞ではフランスに同行した。レース前のクロノジェネシスを見るのは初めて。しがらきでは見せたことのない姿が、そこにはあった。
「“そんなに変わるか”というくらい、気持ちが入っていました。かんできたりもしましたからね。普段はおっとりしていて、おとなしいのに。僕としては、新たな一面を見ました」
パリロンシャンに足を踏み入れても、凱旋門賞を生で見ることはかなわなかった。帯同馬イカットが次レースのオペラ賞に出走。「パドックで引っ張っていたら全然見られなくて、歓声だけが聞こえました」と笑った。有馬記念当日は、中山で観戦する予定だ。
「この世代はグランアレグリア、ラヴズオンリーユーがいて、僕は最強5歳世代だと思っています。グランは1600メートル、ラヴズは2400メートル、クロノは2000メートルと距離のいいところで3冠を取り合えた。同世代がこれだけ走ってくれて凄く誇らしい。有終の美を飾るバトンが回ってきた。もう1個、締めてくれれば、うれしいですね」
世代交代は許さない。ライバルたちは先にラストランを制して、次のステージへ向かった。さあ、有終締め。最強世代を証明して、ハッピーエンドを迎える。
◇池内 将人(いけうち・まさと)1989年(平元)2月5日生まれ、兵庫県出身の32歳。高校生の頃、競馬に興味を持つ。卒業後はノーザンホースパークからノーザンファーム空港を経て、しがらきへ。10年の開業当時から従事。クロノジェネシスが新馬戦を勝った18年9月から厩舎長。「厩舎長になって初めての世代だったし、ラッキーというか恵まれていますよね」と話す。